2008年4月交流会

観光都市 京都における景観施策を学ぶ
〜京都市の景観計画策定の取り組みと実態〜

【日時】2008年4月21日(月)8:15〜18:00
【場所】京都市
【参加者】  名(愛知まちコン会員)

■行 程   

 8:15       名古屋駅太閤通口(旧メディアワン前)集合
 8:30       名古屋駅西口出発(貸切バス)
11:00〜12:30 下鴨神社〜鴨川沿い 見学
13:00〜14:00 昼食
14:30〜15:30 京都市役所(市担当者の説明)
15:30       京都市役所 出発
18:00       名古屋駅前到着(自由解散)


1.景観施策の経緯

  • 大正8年に都市計画法が制定され、その際に風致地区制度ができた。景観政策は、昭和5年の風致地区指定に始まり、当時は約3,400haを指定していた。(現在は約17,938ha)

  • 昭和30年代の宅地開発の急増に伴い、京都、奈良、鎌倉市が国に働きかけ、昭和41年の古都保存法が制定された。

  • 昭和39年に京都タワー建設問題がもちあがり、結果として工作物として立てられた。このことを踏まえ、大きな建物が建てられないようにということで昭和47年に巨大工作物規制区域を定めた。

  • 昭和48年には、市街地景観と住環境の保全のため、市街地の大半を高度地区に指定した。(10m、20m、30m、45mの4段階)

  • 昭和50年の伝統的建造物郡保存地区制度の創設に伴い、京都では4地区(産寧坂、祇園新橋、嵯峨鳥居本、上賀茂)を指定した

  • 平成3年の京都ホテル(高さ60m)に同意した。

  • 平成3年から4年にかけて、京都の北部を保全、都心は再生、南部創造という答申があった。また、職住共存地区・高度集積地区の位置づけを明確化した。

  • 平成8年に景観規制区域を拡大し、屋外広告物対策の強化・高さ規制を強化した。

  • 平成16年に景観法が制定し、平成17年5月に京都市景観・まちづくりセンターを景観整備機構に指定し、9月には京町屋まちづくりファンドを設立した。

  • 京都の町は3方を山に囲まれている。山麓部分は世界遺産に指定されているものもあり、風致地区で景観がまもられていた。世界遺産周辺についても風致地区を指定した。景 観形成地区があった。

  • 景観地区と風致地区にはさまれた地区については、建造物収景地区に指定した。




2.景観計画策定の問題意識:京都の美しい景観の喪失

  • 価値観や生活様式の変化等に伴い、ご近所付き合いの中で町並み保存という考えはなかった。古い建物に住みたくないという考えが地元住民にはあった。また、東京や海外資本が京都に入り、経済性のため京都の町が消失してしまう。

  • 周辺の街並み古い町並みの後ろに大きな建物が建つという課題があった。

  • マンションがたつ、公告物、平成10年 3000件 2%/年減っている

  • 日本の京都、国家戦略として京都の町並みを保存する必要があると考え、京都創成の取組として、平成16年に景観、文化、観光の3つが折り重なって景観を創っていると考えた。




3.新景観計画の構成:5つの柱と支援策

 ○建物の高さ

  • 歴史的都心地区を含め歴史的市街地のほぼ全域を対象に、高さ規制を引き下げた。
    (例:他の字地区 45m→31m、職住共存地区:31m→15m)

  • 工場が多い地区にマンションが建ち始めた。ものづくりにふさわしい建物については
    31mの建物を認め、それ以外の建物については20mとした。

 ○建物等のデザイン

  • 歴史的市街地全域を計画地苦に指定し、エリア拡大を拡大した。
    (2000haから3400haに拡大)

  • デザイン規準を種別から地区別規準にかえ、曖昧な表現を明確にした。
    (2種類から4種類16地域)

  • 景観地区のデザイン地区の規準について、共通規準+地区別規準とした。また、実務の中で得られた優良な提案や地区からの提案を規準に取り入れ、デザイン規準を進化させた。

  • 壁面の連続性確保や風致地区のデザインに配慮して修景した事例などがある。(ガレージや門の修復事例)

 ○眺望景観や借景

  • 京都には歌実の詠まれた優れた眺めが多数あり、京都のみならず日本の財産である。一方で市街化が進むと山並みが見えなくなってしまう恐れがあるため、高さ等をコントロールする必要がある

  • 597件を抽出し、どのようなところを守っていくかを審議会で検討した結果、眺望景観や借景が損なわれる可能性がある38箇所を抽出した。

  • 抽出に際しては様々なシミュレーションを重ね、類型分け(8つ)を実施した。

 ○屋外広告物

  • 屋上広告物の禁止、点滅する広告の禁止、道路に突出した公告物を禁止とした。猶予期間7年としており、7年後には全てなくなる予定である。

  • また、コーポレートカラーの景観への配慮なども取り組んでいる。


 ○歴史的な街並み

  • 京都の伝統的な建造物の保全と外観の修理・修景に対する助成を充実した。

  • 景観地区や美観形成地区に入っていない地区の助成については京町屋まちづくりファンドで対応している。また、ファンド拡大の取組として自動販売機の売り上げ等を活用している。

  • 町並みの維持、保全のため、例えば祇園町南側地区では地元が活発に活動し、独自の防災条例を制定して町並みを保存している。特に道路幅員の緩和等については基準法42条3項により対応している。


4.質疑・応答

Q: 保全地域で規制する一方、緩和優遇措置はあるのでしょうか。
A: 伝建地区のほか、条例による歴史的景観保全修景地区や界わい景観整備地区など地区制度による修理修景等への助成制度がある。また、京町家まちづくりファンドの改修助成により、改修した後に景観重要建造物に指定する流れもつくっている。

Q: 眺望について現存施設で抵触する建物について教えてほしい。
A: 今回の制度を作ったときに抵触する建物はあるとは聞いているがほとんどないと聞いている。


Q: これまでの産業、新しい産業と今回の景観政策策定についてどのような議論があったか教えていただきたい。
景観政策は審議会での意見を踏まえて作成してきたが、個別の企業と議論したということは聞いていない。




5.視察の感想

  • 京都には遊びでしか訪問した経験がなかったが、今回の視察を通じて街を見る視点が変わり、大変参考になった。

  • 京都の景観行政について、既存不適格の事例の対応方法について興味を持っていたが、不適格事例がほとんどないとの事であったため、制度が制定できたと思われる。

  • 景観というと非常に理解されにくい事項であるが、京都のように「京都の景観は国宝である」といった分かりやすい目標設定や説明があれば理解を得やすいと思った。

  • 景観政策の運用に対する評価システムについてはこれから作成するとのことであったが、5年後、10年後に効果を検証すると面白いと思う。

  • 某行政の景観ガイドライン策定に際する住民説明会に参加した。その際に「自分の家は自分の好きなように建てたい」という意見が地元住民からでていた。本日の説明会でも同様の話があり、京都のような歴史ある街ですらそのような意見がでるのであれば、景観に対して住民から理解を得ることは非常に難しい問題だという印象を受けた。

  • 景観政策を実際に運用するにはさまざまな法体系が関連していることにおどろいた。



(記録:平沢 靖聡/(株)日建設計)


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