愛知住まい・まちづくりコンサルタント協議会・2003年度公開シンポジウム

「デフレ社会における住まい・まちづくり」
…人口減少・需要縮小時代における住宅地整備・住宅供給のあり方…

【日時】 2003年12月2日(火)13:30〜17:00 
【場所】マナハウス・マノアホール

案内ちらしはここ

■次 第

1.岩田代表あいさつ
2.講演
「都市の再生と地方の活性化について」 山崎福寿氏(上智大学経済学部教授)
「地域コミュニティの視点で考える市街地再開発」黒崎羊ニ氏(鰍ワちづくり研究所)
3.シンポジウム
 ○パネラー
 ・上記講演者
 ・宝不動産且謦役副社長 西邨昭一氏
 ○コーディネイター
・ 瀬口哲夫氏
(名古屋市立大学大学院芸術工学研究科教授)

岩田代表あいさつ
 今回の「公開シンポジウム」では、都市経済の観点からと、都市計画の観点からの、それぞれのまちづくりに対する想いを熱く語っていただきました。
 議論が盛り上がったシンポジウムの状況は、概要をまとめるよりも、講演者の方々が語られた「キーワード」をストレートに表現した方が、間違った解釈もなく、また、当日のライブ感も伝わるのではと思います。

  では、白熱した「公開シンポジウム」をどうぞ・・・

■講演

(1)「都市の再生と地方の活性化について」                 

 山崎福寿氏(上智大学経済学部教授)

  • 理想的な都市とは何か。答えは一様でない。その問いかけ自体センスがない。
  • 例えば、理想的な携帯電話とはどのようなものか。⇒多く売れるもの。
  • 都市も同じことであり、市場で競争し、残ったものが魅力的な都市である。
  • 今後、地価を上昇できるような都市を創っていくことが重要である。
  • 東京丸の内地区の容積率を50%引き上げると、東京全体の生産性が12.4%上昇する研究成果がある。
  • アメリカの都市研究のなかでも、マンハッタンの容積率を、ニューヨークの一般的な容積率まで引き下げると、ニューヨークの生産性が20%ダウンするという研究結果がある。
  • 容積率上昇の効果は、日本経済にとって極めて大きな効果を及ぼすと考えられる。
  • しかしながら、かつては都市集中が混雑するということから「都市集中は良くない」という観念があったが、これは従来の都市政策の誤りである。
  • 1970年代には、法律改正等により、都市への人口流入を抑制したため、経済成長までを抑制した。
  • 名古屋でも、都心部で容積率が不足していると考える。そのため、不要な容積率を自由に売買できるよう規制緩和を行い、容積売買市場の創設を提言したい。
  • 従来の都市政策の失敗は、「売れないまち」を作ってきたことである。既得住人を保護するあまり、新規に移住する住民を排除してきたことが問題である。
  • このような政策のため、弊害が生じている。
    都市の容積率を抑えたため、郊外へ街(住宅市場)がひろがった。これにより、郊外の自然破壊も進んだ。
    どこまでも、街が広がっている日本は、田舎住まいができない。この理由も、都市が集積していないことの弊害である。
    電力供給は、発電所から遠ければ遠いほど、送電ロスが多くなるため、街が広がることは公共資本利用の無駄であり、環境負荷も過大である。
    災害に弱い住宅(木造住宅密集地域)が広がってしまった。
  • これまでの行政主体のまちづくりから、自由競争によるまちづくりへとシフトすべきである。
  • 香港のビジネスマンは、アフター5に、5つのパーティーを掛け持ちできる。これは、都市が集積している証拠であり、今の日本の都市では不可能である。
  • 土地の固定資産税は理解できる。建物の固定資産は、強固な建物と税額が比例し、これは、日本が地震国であることと相反するため理解できない。
  • 集積できる都市を創るためには、規制緩和が必要である。
     @容積率規制の大幅緩和(上海の例⇒規制がない。)
     A日影規制の撤廃(日照権の売買を可能してはどうか)
     B道路斜線制限の廃止
     C工場等制限法の撤廃(間もなく撤廃予定?、大学は都心に必要)
     D生産緑地制度の廃止(都市に生産性の低い農地を保護する理由はない)
    また、このことに加えて市場メカニズムを活用する手段として
     @容積売買市場の創設(余剰の容積率を集積が必要な箇所に充当する)
     A日照権売買市場の創設(規制緩和が必要)
     B混雑料金制の導入(料金設定をオンピーク時>オフピーク時とする)

(2)「地域コミュニティの視点で考える市街地再開発」               

黒崎羊ニ氏(鰍ワちづくり研究所)

  • 密集市街地のまちの問題を解消するためには、改善方法はどのようなものがあるかを整理する必要がある。特に、問題となっている原因を把握しなければならない。
  • 密集住宅市街地の問題を解消するメリットは、大きなリスクを伴うが、その街を再生することにより、周辺市街地に大きな波及効果を期待できるところにある。
  • 住宅の老朽化とその街に住んでいる人の高齢化が、同時に進んでしまうことが問題である。つまり、災害などによる危険性と、高齢者問題・介護問題とが混在していることである。
  • これに伴い、近隣商店街も経済効果が低迷し、空き店舗が増えるなど、更に街の魅力が低下する悪循環に陥いることになる。また、老朽賃貸住宅の場合は、そこから出たくても、家賃増加を考えると、年金生活者などにとっては難しい問題となっている。
  • このような状況のなかで、役所が何らかの援助をしようと思っても、これまた難しい。何故か。今まで何もしてくれなかったという固定概念が根付いている。
  • このように、まちの問題が相互に複雑化しているため、一般の民間企業の参入も難しいことから、NPOとの協働により、住民の信頼感を築くことも、共同化に向けては必要である
  • 密集市街地を再生しようとする場合、合意形成ができないことがある。合意形成ができない理由は、複雑な権利関係、狭小宅地、住民の高齢化という問題が複雑に関係していることである。その問題を改善するためには、公共と民間、民間と民間の協働が欠かせない。
  • また、個人レベルでの日常的な要求や、不安をどのようにして把握していくかが重要であり、これができれば複雑な問題は少しずつ解消される。
  • 今までのような上位から下位への街づくりから脱却し、今後は、下からの積み上げのまちづくりをしていかなければならない。
  • まちづくりを進めるうえで、事業制度を先行させて考えてはいけない。街の問題を把握し、その問題をどのように解決していくかを先ず考えるべきである。

■シンポジウム               

パネラー:山崎福寿氏、黒崎羊ニ氏、西邨昭一氏
コーディネイター:瀬口哲夫氏    
           



(西邨氏)
  • 名古屋の高度利用については、名古屋の持家率の状況をみると、意味がない訳ではないと思うが、東京ほど需要がないと考える。
  • また、現状を見ても20階以上の高層マンションは、名古屋では10棟位しかないことから、ディベロッパーにとってもリスクになるのではないか。
(黒崎氏)
  • 講演の中で、先住者の擁護(既得権の擁護)をしてきたため、街が拡大してしまったという見解があったが、私は過度の集積の結果、街が広がったと考える。その弊害として、都心の空洞化が現在起こっているのではないか。
(山崎氏)
  • 日本は、世界でも有数の地価が高い国であるにもかかわらず、東京の山手線の中に、いまだに農地が点在するような政策を行ってきた。
(西邨氏)
  • 名古屋における都市の高度化については、行政サイドの問題もある。高層のマンション建築計画の際、行政側は周辺住民と調整しながら進めて欲しいという、東京と比べルーズな指導に留まっている。
(瀬口氏)
  • 東京と名古屋とを比べると、建築したい建物を建築基準法のなかで建てていくという方法と、建築基準法の中で、建てられる建築物を建てていく方法との違いがあるのではないか。
     また、集積のメリットがなくなった街、例えば地方都市などは、どのようにまちづくりを行っていけば良いか。
(山崎氏)
  • いままでの街づくりは、どこへ行っても「○○銀座」があるように、東京にならって行ってきたが、これからは、地域の特色を活かした街づくりが必要である。
     建替えという問題の中には、区分所有法による弊害がある。震災後に建替えを行う場合でも、少数の建替えに反対の住民により、多くの人が危険な住宅に住まわざるを得なかった。この問題を解決しようと、区分所有を証券化しようとしている人達もいる。
  • また、震災後二重債務を回避するため、再開発で分譲マンションを建築し、余剰床を売る計画をしたが、その敷地の北側に住む一部の権利者(10軒)が、戸建て希望のため、日照権を主張した。そのため、当初計画より100戸分建築できなくなった。たった10軒のために40億(100戸×4000万/戸)の損害が生じた。このことをみても、日照権の売買を認めた場合、この問題は回避できた可能性はある。
(黒崎氏)
  • 人は悪意を持って生まれてきた人はいない。安心して生きる・楽しく生きるということに反対する人はいない。そこを原点に議論すれば必ず納得してもらえるはずである。納得してもらう説明をしない方に責任がある。
     一部の権利者のために40億の損害を出したケースにせよ、何故、協力し、戸建住宅を南側に配置し、その北側に分譲マンションを建設しなかったのか。そこが問題である。私的な利益の先に、公益が存在することを強く言いたい。
(瀬口氏)
本日の話をまとめと、街づくりの観点から
  • 競争の原理か、協働の原理か
  • 集中のメリットなのか、集中のデメリットなのか
  • 高度利用なのか、有効利用なのか
ということに整理できるのではないか。このことは、我々が、都市の活性化を考える時に考えさせられるテーマである。                       

以上

 <主催>愛知住まい・まちづくりコンサルタント協議会
<後援>愛知県、名古屋市

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