2002年度4月交流会

彦根市「四番町スクエア」視察交流会

【日時】 2003年4月11日(金) 8:45〜17:30
 【場所】 滋賀県彦根市、滋賀県甲良町

 【参加者】  計19名

■行 程   
8:45  金山駅北口 集合
9:00  金山駅北口出発
 ‖    移動(バス)
10:30  彦根市到着
       ◇ 本町土地区画整理組合事務所にて
       ◇ 「四番町スクエア」、「中心市街地活性化事業」の説明
12:30  昼食(夢京橋キャッスルロード「蔵羽」)
13:00  四番町スクエア、商店街ファサード整備事業等現地見学
 ‖    移動(徒歩)
14:30  彦根駅出発
 ‖    移動(バス)
15:00  甲良町到着
       ◇ 甲良町グランドワークの見学
16:00  甲良町出発
 ‖    移動(バス)
17:30  金山駅着 解散

1.夢京橋キャッスルロード、四番町スクエア、中心市街地活性化事業(滋賀県彦根市)

<説明の概要>

説明:彦根市都市開発部都市計画課 寺田修氏
    彦根商工会議所       安達昇氏
    彦根市本町土地区画整理組合理事長 西村武臣氏
■ 彦根市の位置づけと中心市街地の状況(説明:彦根市 寺田氏)
 彦根市は、国宝「彦根城」が有名である。古くから交通の要所として発展し、35万石の城下町として栄えた。
 彦根市の人口(108,805人(平成15年3月31日現在))は微増傾向にあるが、中心市街地の人口は激減している。
 「彦根城」の観光客数は、年間約50〜60万人程度で推移している。
 そこで、中心市街地活性化基本計画に「彦根城に来た人を街中に誘導すること」を大きな柱とした。
 中心市街地の区域は、彦根城の南東に位置する旧彦根藩の城下町で、面積は約150haである。
■ 夢京橋キャッスルロード(説明:彦根市 寺田氏)
 夢京橋キャッスルロードは、もともと「彦根城」の京橋門から町家に至るメイン通りであった。しかし、築城時の5.6mの幅員では、今日の交通事情に対応することができず、昭和60年度から街路整備を実施することになった。
 この通りの風情を壊すことなく伝統的なまちなみ再生により、生活環境の活性化をという行政からの提案により、住民ぐるみの取り組みがスタートした。建物は、非常に細かい修景基準と地区計画で規制誘導した。街路事業にあわせて、まちまち事業で電線の地中化などを行った。
 商店街の位置づけのあった通りではあるが、店舗はまばらであった。それが事業後、特に飲食店が増えた(事業前 1店舗 → 事業後 16店舗)。住宅から店舗に改装されたものも多い。
 城下町であり、間口が狭く奥行きのある敷地形状であったため、道路の拡幅で前の土地を提供しても奥に十分建替える余地が残ったことがまちづくりを促進できた要因であろう。

■ 四番町スクエア(説明:彦根市 寺田氏、区画整理組合 西村氏)
 四番町スクエアは、夢京橋キャッスルロードに隣接している。以前は「市場商店街」といって、薄暗いアーケードのかかった空き店舗の多い商店街で、最も空洞化が進んでいた。老朽木造住宅が密集し、防災上の危険性も高い地区であった。
 昭和57年に再開発の構想が行政側から出されたが、バブル崩壊とともに平成8年にその構想は断念することになった。その後、若手商店主が新たな街づくりを提言する「檄の会」が結成され、土地区画整理事業の手法をもちいて、現在まちづくりが行われている。
<都市再生(街なか再生型)土地区画整理事業の概要>
名  称:彦根市本町土地区画整理事業
施 行 者:彦根市本町土地区画整理組合
目  的:土地区画整理手法によって、地盤沈下の激しい市場商店街の業種の組み替えや業態の改善、あるいは地区内の生活者のための住区設定を行い、タウンリゾートとしての魅力の増進を図ることによって居住人口や交流人口の増加を促し、中心市街地の活性化を図ることを目的とする。
面  積:1.33ha   
権利者数:77名
減 歩 率:23.05%(公共減歩20.87%、保留地減歩2.18%)
施行期間:平成11年〜平成16年
総事業費:2,764,000千円

 四番町スクエアにはまちづくりの仕掛けがいくつかある。私道の幅員3mの路地をつくり、対面商売ができるようにしている。中心にはパティオを設けた。事前に業種配置を決定した。売却・借地希望の土地は集約換地し、集客施設をつくるようにした。売却希望者の土地を買い増し希望者の隣に換地し個人売買しやすい換地計画をつくった。
 また、区画整理事業ではできない修景整備等を行うため、同一の組合員・役員構成で別組織の「彦根市本町地区共同整備事業組合」がつくられた。"大正ロマン溢れる四番町スクエア"をコンセプトに、統一感のあるまちなみを形成するための「建築・景観ルールブック」や「福祉のあるまちづくり基準」とともにまちづくり協定が決定された。

■ 中心市街地活性化事業(商店街ファサード整備事業等)(説明:商工会議所 安達氏)
 平成11年1月に、彦根市中心市街地活性化基本計画の提出とともにTMOが認定された。TMOは官民一体の第3セクターを目指したいということでTMO構想をつくったが、第3セクターの成功例がないこと、本当に第3セクターが良いのかということから、実際は、商工会議所が担っている。
 中心市街地の商店街では、ファサード整備事業やアーケード改修事業が行われている。ファサード整備が進んだのは、夢京橋キャッスルロードの成功例がすぐ近くにあったことが大きな要因である。花しょうぶ通り商店街では、ファサードを整備しただけではお客は来ないということで、ナイトバザールを開催し、知名度のアップ、集客に努めている(30代の若手が中心となって周辺住民にチラシを配った)。
 橋本商店街には、お年寄りが集う「よりーな」が空き店舗対策事業でできている。

<意見交換の概要>
Q1自主財源がない中で、組合施行の区画整理事業を選択した最大の理由は?
A1:もともと住民発想の街づくりであった。面積(約1.3ha)が狭いこともあり、当初は交換分合を考えていた。ちょうどその時、中心市街地活性化法が施行され、街なか再生土地区画整理事業のメニューが適用できるようになった。
行政発想の再開発が全面見直しとなったことから、住民の行政不信が強く、行政施行では事業が進められなかったということも組合施行になった理由としてある。

Q2土地区画整理事業の立ち上げ前後、組合に対するコンサルタントの関わりはあったのか?
A2:当初は、「檄の会」のメンバーが5千円ずつ出し、年間60万円で地元の設計士(夢京橋キャッスルロード推進者の一人)に2年間支援してもらっていた。住民の合意を得るため、設計士に絵(将来構想図)を書いてもらい、その絵を持って西村理事長と設計士とで、何度も住民の意向を聞いてまわった。
西村理事長は、自分の店をやめて、毎日、区画整理事務所につめている。"まちづくりバカ"が重要だ。

Q3:将来の店舗数は?その内地元経営者は何店舗になりそうか?
A3:現在の権利者数は約70人。将来の店舗数は約50店舗。商売を続ける人は20人程度になりそうだ。商売の継続意向の無い方には、住宅の1階部分は貸し店舗にしてもらえるようにお願いしている。共同整備事業組合でテナント募集しており、現在8店舗が集まっている。

Q4:市独自の補助はあるか?
A4:市の補助(区画道路用地の増分の2/3を限度)と、市職員の派遣がある。

Q5:民有地でつくられる路地は、将来的には市が買うのか?
A5:市は買わない。「路地を寄付するから市で管理をしてほしい」という話しがあるが、これには対応できるのではないかと考えている。(日常管理は地元)。
関連事業として「まちづくり総合支援事業」により、修景整備などを行っている。(組合からの要請により、市が実施)。

Q6:通常、商業地域の場合、区画道路は「幅員8m」が求められるが、「幅員6m」で許可された理由は?
Q6:区画道路は「6m」だが、まちづくり協定で1mずつセットバックすることになっており、実際は「8m」確保されている。

Q7:事業区域が0.5ha→1.3haになったのは、地元の気運が盛り上がったからか?
Q7:事業がやれるかどうか、「市場商店街」の中心にあたる部分から動いてみようということではじめにヒアリングを実施したのが0.5ha。そこで、事業ができそうだということで、夢京橋キャッスルロードからつながるように、順に話しをして1.3haの区域になった。もともとの再開発の区域は2.4haであり、賛同が得られなかった部分は一部残っている。

Q8:事業に合意しない人が少しでもいると、事業は動かないと思うがどうか?
A8:かなり無理をしているところもある。合意を得られていない(2割程度(再開発事業を当てこんで土地を買った不動産業者など))が換地をしているところもある。

Q9:反対者対策に行政は手を出さないのか?
A9:手を出す。毎日出向いている。ただし、移転補償や換地の交渉は組合が行っている。

Q10:駐車場部分の管理・運営方法等は?
A10:駐車場部分は、短冊換地で個人では土地利用できないようにし、借地として換地している。管理については、集客施設の駐車場として一体的に管理する。(まちづくり会社「株式会社四番町スクエア」を立ち上げて管理・運営する。)

Q11:集客施設部分と駐車場部分の地代は同じか?違うとすれば、地代の高い建物部分の換地を皆が希望するのでは?
A11:まだ計画段階だが、地代は違うと思う。建物が建つと長期借地になるので、地代が安くても権利として残しやすい駐車場を希望する人もいる。

Q12:付保留地の価格設定方法は・
A12:保留地の売却単価も付保留地の個人の売却単価も同じに設定してもらっている。(保留地の価格に合わせることについて、事前に合意をえた。)

Q13:店舗部分に補助金は入っているか?
A13:商店街でファサード整備事業を活用している(最高350万/店舗)。

Q14:個人の建築費の借入に、共同組合は関わっているか。
A14:個人の建物には、共同組合は全く関わっていない。地元の信用金庫がバックアップしてくれている。(本来お金を貸してもらえないような人でも貸していただいている)。

夢京橋キャッスルロード


四番町スクエア



花しょうぶ通り商店街



登り町グリーン通り



2.グラウンドワーク甲良(滋賀県甲良町)

<グラウンドワーク甲良の概要>

 甲良町はまちを流れる1級河川犬上川の扇状地にあり、良質米の産地として開けてきましたが、干ばつ時の水不足には度々悩まされつづけてきました。昭和7年の大水騒動がきっかけとなって、貯水量450万トンの犬上ダムと金屋頭首工が築造され、以来安定した用水供給の農業用水は、先人の知恵や努力により、町内全13集落に分水され、居住地内を縦横にはりめぐらされた水路を通り、現在も野菜洗い、防火用水、融雪、屋敷内の庭園への導水などの日常生活用水の機能を経て、水田に到達する方式となっています。
 近年の兼業農家の増加や後継者不足などの問題から農業経営の合理化を目指して、昭和56年から「ほ場整備」が進められてきました。さらに、これまでのオープン水路から地下パイプライン化計画が提示されましたが、町から森や木がなくなる、集落内の水路に水が無くなるといった憂いの声があがり、計画を考え直そうというところから、住民参加の水を生かした公園づくりがはじまりました。

<グラウンドワーク甲良視察ルート> 

 甲良町では、バスを止めながら、4ヶ所のグラウンドワークを見学しました。

桂城の滝


ひいらぎの森



ビオトープ



神明の滝


3.視察の感想

 帰りの車中で出された参加者の意見・感想を紹介します。

<今回の視察について>

(彦根市)
  • こういう機会に四番町スクエアの関係者から直接話しが聞けてよかった。
  • 四番町スクエアなどの説明は参考になった。
  • 四番町スクエアがオープンしたらまた行ってみたい。
  • お金がかかっている。投資効果がどう出るか10年後が楽しみだ。
  • 行政と地元の信頼関係がなければ難しいと思った。
  • デザインの統一について、どの程度まで統一させるのが良いのかと疑問を持った。
  • 商店街は、ファサードが整備され、空き店舗も少なく、レベルが高いと思ったが、車が多いためゆったりできないことが残念だ。商店街に車を進入させない工夫が必要だ。
(甲良町)
  • スプロールが少なく、土地利用コントロールがなされている印象をもった。

<まちコン交流会について>

  • 20名程度の参加者数が、顔と名前が覚えられるちょうど良い人数だと思った。
  • 今回はじめて参加したが、勉強になった。また参加したい。

(記録:佐治 友子/ランドブレイン(株)名古屋事務所 )


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