[パネラー]
高橋 寛治 氏 /飯田市教育委員会スポーツ課長
野口 和雄 氏 /(株)地域総合計画研究所取締役
吉村 伸一 氏 /(有)吉村伸一流域計画室代表
山岡 義典 氏 /前掲
[コーディネーター]
曽田 忠宏 氏 /(愛知工業大学助教授)
将来、コンサルタントという職業はいらなくなるだろう。その役割をする人材が市民、行政の中に育っていく社会を目指すべきだからである。それには、学問、教育のない大学、制度に守られた行政、社会から閉ざされたコンサルタント、この三者を壊し、従来の制度や計画論を新しいシステムに再構築していかなければならないだろう。その中でコンサルタントの必要性が急浮上してくると考えられる。それは、社会が必然的に与えてくれる役割であって、仕事ほしさにこの役割を演じていけばコンサルタントとしての職能は確立しないだろう。また、そうしたシステムを構築できる能力を持ったコンサルタントは少ない。コンサルがこうした能力を身に付けるには、まず、行政がそれなりのコンサルティング料を払い、コンサルが育っていくシステムを作らなければならない。そして、コンサルタントは市民運動にボランティアだと割り切って積極的に飛び込んでゆき、所員の育成に努めなくてはならない。
また、行政はまちづくりを含めた公共事業の責任は市民が負うのだとういことを明解にした上で、行政が決定権を持たなければいけない。そして、コンサルタントは行政に対しても、市民に対してもそれらの計画の正当性を誰にでも分かる言葉で言えるような能力を持たなくてはならない。
まちづくりとはどんな町をどうやってクリエイトするかであり、責任は行政と住民にある。私の行ったまちづくりでは、行政が市民と対等な視線に立ち、時間をかけて取り組むことで地域の協力を得られるようになっていった。市民と行政が考え、コンサルタントには制度運用の知恵を借りるにすぎなかった。コンサルタントが既存の技術の延長線上に新しい町ができると思っている以上は、その必要性を感じない。コンサルは現状の問題を解決しただけでは職能を発揮したことにはならず、少なくとも20〜30年後を見通した何かを示さなければならない。
まちづくりのプロセスで市民参加及び市民の合意形成を重要視するのは当然であるが、なぜ市民が参加をするのか、市民の合意とは何なのか、多くの意見の中からいかに決定をくだすか、その中における行政、コンサルの役割とは何なのかをまずははっきりさせなければならない。計画の決定は、市民の合意のもとに最終的は行政が行うもので、そこには直接民主主義と間接民主主義の中間の仕組みが必要である。
コンサルタントの職能の確立については、市民対し有益なことは自主事業としてでも起こし、行政に受託事業としての価値を認めさせるような努力が重要である。
市民参加とは責任を持った市民団体の参加であり、参加する以上、学習しなければならない。その学習にコンサルタントがどうかかわれるかは重要な職能である。また、コンサルタントは法律を大前提に考えるが、法律というのは造れるものであるという感覚が重要で、地方分権の世の中では立法能力が重要になってくる。
コンサルタントの役目は、行政と市民の間に入り、市民にまちづくりのしくみをわかりやすく伝えることである。そして、市民の要求を行政に投げ返し、意見を反映させることにある。コンサルタントの職能の確立には、まず、そうした市民に支持されることを行わなければならない。
(文責:堀内研自((株)都市研究所スペーシア)