自分の仕事をつくる
著者:西村佳哲
発行:昌文社(2003.9.30発行)

 この書は、「働き方研究家」と名乗る著者が、魅力的なワークスタイル・ライフスタイルを貫く人々の働き方を紹介したものである。様々なデザイン(ものづくり、ひとづくり)に関わる人の、デザインに対する取り組み方、考え方、そして生き方がリアルに伝わってくる。現在のモノのあふれた社会のなかで、「自分の仕事とは何なのか」「働くことの原点となる価値をどこに置くのか」ということを考えさせられる。

 特に私が印象に残ったのはヨーガン・レールというデザイナーの話である。彼は自分の生活空間にも自らの作品を用いる。そして、「あまりゴミをつくりたくないから」という極めてシンプルで真っ当な理由により、「モノをつくる以上、それが永久的に存在するようなつもりで」耐久性のある材質を使うという。それでいて彼の生み出す繊細な衣服や家具、食器は、全てが環境に優しい。彼の「デザインに対する美意識がエコロジーの精神を育む」という理念と、自分のつくりだすモノが世界の自然や環境に優しくつながっているデザインの仕事に感銘を受けた。

 今現在私も自分の将来に向けて、自分の仕事とは何かを真剣に考え始めたところである。人・もの・まち・環境などに接して何かを作り出す仕事に興味はあるが、自分はその中で社会とどう関わりを持っていくのか。誰かを幸せにする仕事ができるのか。そもそもどんな働き方をイメージするのか。自分の内面とまだ見ぬ自分の仕事を強く結びつけて考えさせられる一冊であった。


社団法人 地域問題研究所 インターン生 二村春香(岐阜大学大学)/2005.9

 

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