揚輝荘と祐民 よみがえる松坂屋創業者の理想郷
NPO法人揚輝荘の会 編著
風媒社 2008年7月25日発行
第1章 揚輝荘へようこそ−庭園・建物みてあるき(佐藤允孝)

第2章 揚輝荘を解読する(麓 和善)
     聴松閣の地下室を読む(野々垣篤)

第3章 伊藤祐民とその時代
     祐民の近代都市名古屋づくり(高木傭太郎)
     インド旅行−紡がれたアジアへの思い(田中 進+鬼頭伊之助)

第4章 いとう呉服店の歴史(鬼頭伊之助)
     古写真に見る茶屋町界隈(伊藤宗太郎)

第5章 揚輝荘の活用と城山・覚王山のまちづくり(鈴木賢一)

紹介が少し遅くなってしまった。覚王山日泰寺の東にある揚輝荘のことが詳しくわかる本である。以前、愛知まちコンの交流会で揚輝荘にてワークショップを開催したが、当時はまだ伊藤家の所有であった。その後、その土地の中央にマンションが建てられ、北と南に庭園と一部の建物が残された。その部分は名古屋市の所有となり、現在庭園の公開をしている。今後建物などの整備が進められる予定だが、名古屋の新名所としての価値は十分にあると思う。

本書は、この揚輝荘をこよなく愛する市民が活動しているNPO法人揚輝荘の会のメンバーと揚輝荘の研究者が執筆したものである。ガイドブックとしても活用できるし、近代建築の解説書でもある。また、明治末期から昭和初期にかけての名古屋を代表する財界人である伊藤祐民氏の活動を通して、名古屋のまちづくりの経緯を知ることもできるという、多様に楽しめる内容である。質の高い近代建築や庭園は全国にもたくさんあるが、名古屋の商人の粋な遊び心や現代につながる名古屋の歴史を考えながら揚輝荘を味わうと、名古屋のまちに愛着がわくと私は思う。名古屋のまちづくりに関わる方には是非読んでいただき、揚輝荘を訪れていただけたら幸いである。
川本直義((株)エルイー創造研究所)/2010.2



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