ワークショップは宝の山−国際協力からまちづくりまで−
対談:平山 恵+清水 義晴
発行:パラダイムシフト文庫

 最近では「ワークショップ」という用語が、徐々に市民権を得るようになってきており、まちづくりの現場でも様々なワークショップが開催されている。ワークショップの場の不思議な高揚感は、それを体験した人でなければなかなか理解しにくいと思われるが、そうしたワークショッップの魅力を、さまざまな現場でのエピソードを通じて紹介しているのが本書である。
 本書は、国際協力コーディネーターとして世界の現場でワークショップを展開する平山恵氏と、「えにし屋」主宰として、全国各地のまちづくりをプロデュースする清水義晴氏の対談という形で進められている。
 バイタリティ溢れる平山氏の行動範囲は、秋田県の過疎の町からカンボジア、カリブ、アフリカとワールドワイドだ。いずれも現地に長期滞在し、そこに住む人々との信頼関係を築きながらワークショップを展開している。いくつかの現場でのエピソードが語られる中で、ワークショップの本質が、「場づくり」であることが明らかにされていく。つまり、地域社会や組織の固定化された人間関係や常識の枠を取り払い、自由に考え発言することが可能な場所をつくりだすことによって、はじめて人はとらわれのない目で問題を直視し、創造的な知恵を創出できるというのだ。
 また、国内のまちづくりを数多く手掛ける清水氏は、ワークショップの本質を「シフトするための技術」、つまり、見方を変える「転観」を促す技術であると言う。ものごとが動き出すためには、いわゆるパラダイムシフトが必要であるが、その出発点になる「転観」の場を、グループダイナミクスの中で生み出すのがワークショップというわけだ。
 対談の中で語られるエピソードは、それだけでも読み物として十分魅力的だが、ワークショップの具体的な技法や、ファシリテーターに求められる資質、姿勢など、ノウハウ面でも非常に示唆に富んでいる。本書は、ワークショップの魅力や醍醐味を理解するための一冊として、最適な入門書と言えるだろう。
 岡田敏克((社)地域問題研究所)/2001.5

 

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