都市
増田 四郎著
ちくま学芸文庫  1994.8.4 発行

 最近毎日のように心の痛むような事件が新聞に掲載されている。なぜこんなに人と人との結びつきが希薄になってきてしまったのか。パソコンや携帯電話の普及により、人と人とが直接に対話する機会が減少したのか、少子化による過保護が原因なのか分からないが、加害者の個人的な理由だけではなさそうだ。
 いろんな社会問題を抱えている都市、都市で生活している市民、その市民が心地よく生活できる都市を形成するためには何が必要なのであろうか。
 この本は昭和27年に出版された。日本社会の近代化がどのようにすれば成し遂げるられるのか、と言うテーマを説き明かす目的であった。そのために、成熟社会としての西欧の都市を構成する都市と、都市に生活する市民とは何かを、日本と比較することにより、日本のあり方を探ろうとしている。
 日本には西洋で言う市民は育っていない。上位下達的社会が日本の特徴であり、国や権力から自立的でなかった。
 市民が心地よく生活するには、「自分の属するコミュニティ、ごく狭い範囲」からどうしたらよくなるか、「バラバラになったものをもういっぺん意識的に結合する…広場に花を植えるのもよい、公民館をつくるのもよい。…具体的に何かやればできるのだ、そのできるという基準を世界の動きとの関係でみんなでよって相談してやってみる。…ここに新しい日本流の市民の考え方がでてくる」。
 少々堅い本ではあるが、この本を読む中で、「生活にうるおいとはりあいのあるコンミュニティー」を築くことが、傷ましい事件を減らし、人と人とのふれあいが感じられるまちづくりにつながるのでないか、と考えさせられる一冊である。
近藤 光良((株)アール・アイ・エー)/2001.1

 

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