都市はよみがえるか-地域商業とまちづくり
著者: 矢作 弘
出版: 岩波書店 1997.12.19
 著者は日経新聞社の編集委員であり、都市問題について新聞紙上で時折論じている。
 現在、日本の商店街が崩壊しようとしている。『緑が破壊されて大規模ショッピングセンターが開発され、中心商店街がさびれ、地域社会が崩壊し、大型店が空き家になって都市の「顔」に当たる駅前が空洞化し、最寄り品商店街が廃れてそこに暮らす高齢者が買い物に不便を感じ…』るようになりつつある。この様な街をどのようにして活性化できるのか、著者は現在日本の商店街が置かれている現状を述べながら、街の活性化について、成功した実例を述べつつ、これからの商店街を中心とした街の活性化方法を模索しようとしている。
 『商店街は地域の社会資本』であり、今早急に、『市民資本型の商店街おこし運動をバックアップすることが必要』である、と主張する。
 街の姿を、アメリカの成長管理政策の中でいわれている「ニューアーバニズム」、つまり、『コミュニティの規模がコンパクト』…『住宅、職場、そして商業地がそれぞれ隣接し、多様性を備えているコミュニティーが理想』と考える。
 この思想をもとに、国内外の話題となった都市、及び活性化に努力している商店街について述べている。また、まちづくり会社の例として長浜「黒壁」の例を詳細に報告し、第3セクターのかかえている問題点を含め、まちづくり会社の課題について述べている。
 どうすることが現在の問題解決になるかについて、明快に述べられているわけではないが、各地の問題例、努力している例などを取り上げながら理解しやすく書かれている。
 所々に述べられた著者のまちづくりに対する考え方は、今後まちづくりに取り組む上で多いに参考になろう。 
近藤光良(アール・アイ・エー)/1999.11



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