自分たちの住む街を如何に守っていくか。これは非常に大切なテーマである。しかし、これまでのまちづくりにおいて、案外、蔑ろにされていたことかもしれない。スクラップ&ビルド型の都市開発の時代から、自分たちの手によって都市を守り育てる時代へ。このまちづくりの潮流の中で、「都市を保全する」ことの重要性は認識されつつある。では、「都市を保全する」とはどういうことなのだろうか?都市の何をどうやって守ることなのだろうか?
歴史的な町並みを歩くことを楽しみにする私にとって、「都市を保全する」と言えば、それは即ち蔑、「都市の歴史的環境を保全すること」という認識があった。しかし、この本を手にとったとき、「都市を保全する」ことをあまりにも狭い視野で捉えていたということに気づいた。
この本は「歴史的環境の保全」「多自然居住地の保全」「災害から都市を守る」「風景計画とデザインガイドライン行政」「都市コミュニティの保全」「都市環境問題と地球環境問題」の6章から成り、それぞれについて、その意義と、制度あるいは施策、あるいは実例が紹介されている。都市工学的な視点から書かれているため、決して易しい内容ではない。しかし、ぜひ読まれることをおすすめしたい。この本は、まちづくりに関わる実務者にとって、これからのまちづくりのメインテーマとなり得る「都市を保全する」ことについて、新しいスコープを得られる貴重な1冊となるのではないだろうか。
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