本書では、重要であるもののこれまであまり論じられてこなかったトイレとトイレットペーパーに焦点を当て、そこから環境問題やまちづくりについて論じている。調査地は、中国瀋陽市及び、日本の各都市である。
中国瀋陽市におけるトイレ事情
中国では、都市の近代化に伴い、トイレも近代化が進められている。
中国では公共トイレは有料であり、トイレ管理業務が地方からの出稼ぎ労働者の貴重な収入源となっている。一方、トイレットペーパーの使用増加をうけ、トイレットペーパー製造工場が乱立し、それが環境問題となっているという負の側面も存在する。
日本におけるトイレとまちづくりの事例
日本におけるトイレとまちづくりの事例としては、鳥取県倉吉市・兵庫県神戸市・京都府京都市の事例が挙げられている。
倉吉市では、トイレづくりは「いい環境をつくる努力が、やさしさのまちづくりにつながる」という考えの下に、文化のまちづくり実現のひとつの手段として実践され、「まちづくり特別事業」で公共トイレが整備された。
公共トイレ整備の成果としては主に以下の点が記されている。
1)お年寄りが安心して出掛けられるようになり、外出機会が増えた
2)学校でもトイレ教育が見直され、子供たちの環境教育、トイレの美化の意識向上に役立った
3)町全体をきれいにしようとする意識が強くなった
4)トイレが町の観光ポイントとしての役割を果たすようになった
神戸市南京町では、観光トイレを設置したことで観光客の滞留時間が大幅に増えたとされている。
また、京都市でも観光客に対するアンケート結果(公衆トイレに苦情が殺到)を受け公共トイレの新設を行っている。
ただし、公共トイレの一番の問題は維持管理費の問題であり、これを受けて京都市は有料のトイレを設置したが、採算はまだ取れていないとのことである。
トイレットペーパーと環境問題
日本人が1人で一日に使うトイレットペーパーは約8m。これは、日本人だけで一日に赤道を10回以上巻ける量を消費している計算となる。
また、トイレットペーパーは一度使えば二度と再利用できないという特性を持っているにもかかわらず、近年パルプ100%のトイレットペーパーが増えつつあり、リサイクルの観点からすると時代に逆行した流れとなっている。
本書では、以上の情勢下において、再生紙のトイレットペーパー製造業者及び自治体の取り組みが紹介されている。東京都立川市では、静岡県富士見市の再生紙トイレットペーパー業者と契約し独自ブランドのトイレットペーパーの製造することでリサイクルを推進している。
以上のように、本書では、トイレとトイレットペーパーに関して中国と日本の事情が記されているが、当該問題は、近年徐々にその研究が積み重なられてきた問題であり、今後更に研究が進められることと思われる。
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