建てずに死ねるか!建築家住宅
著者:大島健二
発行所:株式会社エクスナレッジ 2002.12.20

 これから家を建てようと考えている人に向けて数多くの「施主本」が書店の棚に並んでいる。その中で異彩を放っているのがこの「建てずに死ねるか!建築家住宅」である。赤色の地に金色の手書き風の文字という外見同様、中の文章も非常に印象に残るものであった。"建築家住宅"とは作者の造語であり、建築家の設計する住宅のことである。建築事務所を政界の党派のように「実験党」や「ユニッ党」などに、建築家をそのメンタリティーで「アカデミック系」や「図面屋本舗系」などと独自の視点で分類したり、"絶対に「建築家」に頼んではいけない人"や"「建築家住宅に住む覚悟」"について建築士である筆者が自虐的なユーモアを交えてわかりやすく解説している。
 筆者自身はこの本の主旨を「建築家住宅」をとりまく摩訶不思議な現在的状況を「誇張」と「偏見」に満ち満ちた寓話的な態度で切りくずしていこうとする試みであると述べている。「建築家住宅」を建てようという主張は無く、話題の内容は「建築家住宅」のみにとどまらず建築家ブームとメディアの関係など様々であり、一般的な「施主本」とは一線を画している。住まいづくりに悩んでいる人にはもちろん、住まいづくりについて真剣に考えたことのない人にもお勧めの1冊である。
山崎 崇 (鞄s市研究所スペーシア)/2004.8

 

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