「社会調査」のウソ 〜リサーチ・リテラシーのすすめ〜
著者:谷岡 一郎
発行:文芸春秋(文春新書110)

 最近は市民参加や計画プロセスの公開などが求められるようになって、我々コンサルタントの仕事でも市民意識調査を行ったり、それらデータを扱う機会も多くなったと思う。そんな時、少ない回答数で無理やりな集計をしたり、都合のいい結果だけをつまみ食いした経験はないだろうか。そんなのは普通だ、低予算で仕方ない、なんて声も聞こえて来そうだが、我々はプロとして調査方法やデータハンドリングの基礎は理解しておきたい。
 著者はずさんな社会調査を『ゴミ』と呼び、世の中は『ゴミ』だらけだと嘆く。学者、官庁、民間、NPOと相手構わず歯に衣着せぬ論調でバッサバッサと切りまくる。
 そして社会調査が世の中に溢れる中で、リサーチリテラシー(調査を読み解く力)を身に付ける必要性を訴えている。我々も結構耳が痛いし、反論も多いとは思いますが一読をお勧めします。
 どんな感じの本かは冒頭の一文があらわしています。
「・・・・・「ゴミ」は「ゴミ」を呼ぶ・・・・この本は少々過激な内容である。多くの社会調査が実名で批判されており、その数は五十以上にのぼる。ちなみに実名で批判した人々には、反論があればお答えすることを約束する。・・(中略)・・もう一度お断りしておくが、ずさんな調査(すなわち「ゴミ」)をまき散らしている人々のうち、血圧の高い人は読まないほうが無難である。」 でも、こんな調子でみんなを敵に回して大丈夫かな、なんて小心者の私は思っちゃいますが。
藤森幹人((株)日建設計 名古屋 計画室)/2001.5

 

▲図書紹介のトップに戻る▲