創発まちづくり―動く・繋がる・生まれる
和田崇 編著
(株)学芸出版社 2005年12月30日発行

第一章 相互作用の場が生み出す創発まちづくり 和田崇
第二章 若者たちの創発 大学と地域の相互作用 川名和美
第三章 SOHOの「あったらいいな」をカタチにする人肌感覚の場づくり 牛来千鶴
第四章 一緒に種を播き、さわやかな自慢話を咲かす 氏原睦子
第五章 探知創発のまちづくり 相互作用の場のマネジメント術 吉原俊朗
第六章 「ひと」をつなぎ、「まち」をつなぐ 地域連携の仕掛け 和田崇
第七章 メディアが創発を後押しできるか 新聞記者とまちづくり 増田泉子
第八章 創発をはぐくむ行政へ 官民融合のチャレンジ 重徳和彦
第九章 創発まちづくりの九原則 松波龍一

 編著者の和田崇氏の説明によると、「創発まちづくり」とは、異なる価値観や能力を持つ「ひと」(あるいは異なる個性を持つ「まち」)が、相互作用を通じて刺激しあい、新しい価値観やアイデアを「創」造するとともに、具体的活動を誘「発」していくようなまちづくりを表現する造語とのこと。
 この本は、広島市とその周辺の7つのまちづくり事例を紹介し、最後にそのエッセンスを九原則にまとめたものである。各事例は、まちづくり現場に身を置いて活動している30〜40歳代の7名によって書かれている。事例執筆者は、まちづくりに関わるコンサルタント、研究者、新聞記者、行政職員などそれぞれ立場が異なっていて、様々な視点からの見方も大変興味深い。
 名古屋市を中心に活動している私にとって、広島市は地方の大都市であり似た部分が多く、執筆者の世代もほぼ同じということもあり、共感する内容も多く、一気に読み進むことができた。最後の松波龍一氏のまとめは、「じっくりと自分のまちのよさを味わい、慈しみ、そのことが生業に結びついているような暮らしぶりが理想だ。まちづくりの日常化こそが、人々の共感を呼び、豊かな相互作用を生み出すことになるのではないか。今求められているのは、まさに「まちおこしではなく、まち鎮め」なのである。」とある。私は、まちづくりをコーディネートする際、とかくイベントに走りがちであったことを反省し、今後は持続的なまちづくりを心がけたいと思う。
川本直義((株)エルイー創造研究所)/2006.2

 

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