コンバージョン、SOHOによる地域再生
小林重敬編著
2005/01/30 学芸出版社

 産業構造の変化に取り残された都心部の中小ビルの空きビル対策として、建物コンバージョンによるベンチャー企業誘致など都市型新産業の育成による都心まちづくりが近年行われている。本書では東京の神田・秋葉原地域のSOHOまちづくりと、大阪の船場デジタルタウン構想が紹介されており、いずれも集客施設中心の消費型まちづくりではなく、地域生産型まちづくりを目指している点が従来とは視点が違う。その中で現代版「家守」と呼ばれるタウンマネージャーの存在がキーになっているが、現実は厳しいようだ。中小ビル不動産オーナーの地域ネットワークが無くなり、地域で足並みを揃えた再活用が連鎖しにくい。一方で、大阪都心のマンションでは約4分の1が仕事場として利用されているなど、団塊世代の大量退職やコミュニティビジネスの台頭を控えて今後は様々な都心ライフスタイルがさらに増える予感もする。
 今、そうした人々の力を一つの流れに導く「新しい都心部コミュニティ」が求められているように思う。個別資産がバラバラに効率を追及すれば地区全体の価値が衰退するというデフレスパイラルを脱却するために。名古屋都心でも次々と大型再開発が実現しつつあるが、その周辺部に取り残される中小ビル群の再活性化が今後益々大きな課題となってくるであろう。

藤森幹人((株)日建設計名古屋オフィス)/2006.3

 

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