市民のための都市再生〜商店街活性化を科学する〜
編者:池澤 寛
出版:学芸出版社

 中心市街地の衰退は、既に社会問題として認知されている。もちろん中心市街地でご商売をされている方には死活問題であり、活性化の糸口を掴みたいと考えておられるだろう。今回ご紹介する本書は、専門家はもとより市民の方に読んでいただき、自分のまちの中心市街地を当てはめながら読んでいただきたい一冊である。

 三部構成の第一部では、商店街の衰退を科学的に解析している。数学による分析はともすれば敬遠されがちである。しかし、数字は嘘をつかず、また感情が移入されないため客観的で正確に現状をみつめることができる。商店街はその商圏や規模、性格などから4つに分類でき、都市の商業ネットワークの中に成り立っている。それぞれが役割を果たすため、ターゲットやコンセプトを明確にすることが活性化に向けての第一歩である。また、都市経営の視点から駐車場整備を含めた中心市街地の理想的な再構成についても提案されている。
 第二部では、都市計画的な視点から商店街を考え、第3部では商店街スケールでの個性づくりをまとめている。それぞれ現在賑わっている国内外の中心市街地の事例を紹介し、そこから成功のヒケツを探っている。中心市街地の存在意義を確固たるものにするためには、都市スケールで長期的な計画が不可欠であるが、商店街レベルでの努力が成功に至った例も少なくからずあり、それらから学ぶことは多い。

 中心市街地活性化に立ちはだかる問題は数知れず、一朝一夕で解決するものなどない。だからこそ、原点に立ち帰り、科学的な基礎調査をしっかり行い、打つべき手を検討することが活性化への近道になるのではないだろうか。

河北裕喜(社団法人地域問題研究所)/2003.4

 

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