まちづくりを学ぶ〜地域再生の見取り図〜
石原武政 (関西学院大学教授),西村幸夫 (東京大学教授) 編
有斐閣ブックス 2010年9月発行
目 次
序 章 いまなぜ,まちづくりか(石原武政)
第1章 まちづくりとは何か(石原武政)
第2章 まちづくりの枠組み(西村幸夫)
第3章 まちづくりの変遷(西村幸夫)
第4章 住民主体のまちづくりを進める仕組み(石塚雅明)
第5章 パートナーシップによるガバナンスの形成(石塚雅明)
第6章 まちを活性化させる地域産業(鈴木茂)
第7章 まちに賑わいをもたらす地域商業(渡辺達朗)
第8章 まちを支えるインプットとアウトカム(鈴木茂)
第9章 美しく創造的な町並みをつくる地域デザイン(瀬口哲夫)
第10章 まちづくりを通した安全と安心の向上(山本俊哉)
終 章 まちづくりの今後に向けて(西村幸夫)

かつて自動車がまだ普及していない頃、私たちは、ごく限られた範囲の小売店から商品を購買し、普段の生活を営んでいた。小売店の側からいえば、消費者はすべて馴染みの客で、どこの誰であるかわかっており、個々の消費者の家の職業から家族構成はもちろん、血縁関係などもすべて知っていた。こうしたコミュニティにおける濃密な関係は、人びとを深く結びつけ、それが地域の防犯にも大いに役立っていた。

やがて自動車が普及し始め、また、分業関係が高度に発達し、スーパーマーケットなどの市場により、人びとは商品をどこででも自由に手に入れることができるようになった。地域の閉ざされた関係は解放され、地域独自の暗黙のルールなどはもはや存在しなくなり、合理的な全国ルールが地域を支配するようになる。こうして地域のコミュニティは崩壊し、隣にどんな人が住んでいるのかすら、わからない社会になっていった。煩わしさから解放される反面で、人のぬくもりや人とのつながりが希薄になり、何か物足りなさを感じるようになるとともに、地域のつながりの中で形成されていた安全・安心のネットワークを機能させる基盤が崩れてきた。

便利な現代社会において、かつてのような地域コミュニティを取り戻すにはどうしたらよいか。「まちづくり」がいま投げかけているのは、こうした問題にほかならない。この本は、まちづくりを都市計画、地域経済、流通、地方財政、景観などさまざまな視点から多面的にとらえ、その意義や現状・歴史、課題を明らかにする内容となっている。
加藤洋司((株)国際開発コンサルタンツ 名古屋支店)/2011.1



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