まちの色をつくる 環境色彩デザインの手法
吉田 慎悟著
建築資料研究社  1998.10.1発行

  私は、幼いころから色と言うものにとても興味がありました。何か建築におけるよい色彩表現の方法に関する本がないものかと思いこの本を見つけました。普通ファッションや商品としてのカラーデザインと言えば、流行や趣味など個人の考え方によって決められるものですが、建築における色彩(外観)は個人的なものであってはならないものであると思います。建築はその"場"に何十年も建ち続け、街並みや景観に大きく影響するものです。民家が地域の木材や土、焼き物などの自然を使って建てられた時代は、それらが集合してできる街並みも穏やかな色調で整い、周囲の自然ともなじんでいました。しかし機能性や経済性に優れた新しい建材が開発され、色彩も自由に安価に流行するようになったころから、日本の街並みは混乱し始めてきたのです。色彩はすべて魅力的で美しく、それぞれに善し悪しはなく色彩はその使い方によって決まります。それではいったい何に気をつけるべきなのでしょうか。この本の著者である吉田さんは次のようなことに配慮すべきであると言っています。@秩序のある景観をつくるA落ち着きと潤いのある景観をつくるB地域に蓄積された特性を生かした風景をつくるC楽しく賑わいのある景観をつくるD地域の将来を見据えた新しい個性的な景観を作るEわかりやすく安全な都市景観をつくるF質の高い誇れる都市景観をつくる。つまり、公共性・地域性・地区性・美観性・環境性・耐久性・安全性のうちその"場"を考慮して7項目のどれを重要視するかが大切であると言っています。現在、住民参加のまちづくりでは、機能で積み上げられていく形態よりも、色彩のほうが一般の人には議論しやすいと思うし、色彩の議論は身の回りの環境を見直すきっかけとなり、まちづくりは活性化すると思います。個人の所有する建築物も、その外壁は公共のものであり、地域の景観を構成する大切な要素になります。まちの景観は最終的に地域の住民がつくっていくものであると思う。今後それぞれの地域で色彩に関する景観条例ができ、地域住民によるまちづくりがもっと積極的に行われるようになるとよいのではないでしょうか。
飯沼 健一((株)宅地開発研究所)/2001.5

 

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