子供の眼でまちづくり
著者:寺本 潔
出版:KTC中央出版 1999.7.30
 現在、全国各地でまちづくりが盛んに行われていますが、次世代のまちづくり人である子供たちの視点を重視して取り組んでいるところはそれほど多くありません。その必要性を強く主張しているのがこの一冊です。
 まちの中には、住民の様々な体験的印象や情緒的記憶が刻印されています。とりわけ、人々の歴史的な生活歴が息づく路地や城下町、宿場町、港町などには、実際、多くの人々によって形づくられた街並みや特徴的な建築様式など、目に見える「場所」が残っています。また、目に見えにくい、例えば、地名や祭り、伝統行事など、その土地固有の習慣、賑わいもまちの重要な要素です。『これらの価値に気づかせるまち歩きや保全への具体的なアクションを子供の時期から経験することが大切である』と著者は主張しています。なぜなら、文化財としての意義はもちろん、その子にとって大人になってから思い出す原風景の基盤にもなるからです。
 持続可能な都市づくりを考える上でも、子供たちにもこういった場所のイメージを伝えていく必要があります。コミュニティが崩壊し、地域の教育力が低下している今日、子供たちによる「まち学習」こそが大切であり、みんなが自分のまちと感じることが重要ではないでしょうか。2002年度から学校週5日制がスタートしますが、これを機会に総合学習としての「まち学習」を取り入れていく必要があります。子の本を読んで、一人でも多くの人に「子供の眼でまちづくり」を行う参考にしていただければと思います。
 大塚俊幸((社)地域問題研究所)/1999.11



▲図書紹介のトップに戻る▲