著者は既に『声に出して読みたい日本語』草思社発行で有名になった教育学者であり、教育者でもある。
なぜ教育の本なんか、と不信に思うかもしれない。正直、私自身最初は斎藤孝の本だから読んでみようという単純な気持ちであった。しかし、読んでいくうちに、この考え方はわれわれがコンサルタントとして仕事に携わる上で心得ておかなければならない大切なことではないだろうかと思えてきた。特に、ワークショップや権利者交渉を行う立場の人には役に立ちそうである、と思えたことからここに紹介することにした。
著者が伝えたい〈3つの力〉とは、子供たちが社会に出たときに必要となる基本的な力であり、(1)コメント力
(2)段取り力 (3)まねる盗む力のことである。
(1)コメント力には、要約力、質問力、コメント力がある。筋道を立てて論理的に骨子を要約するという業をどのようにして身につけたらいいのか。この課題は私たちがコンサルタントを実施する場合対話やコミュニケーションにおいて要領よくわかりやすい説明を行うときに必要となる能力である。
(2)段取り力、これも非常に大切な力である。著者は段取り力とは、つぼを押さえて遊びを作ることのできる力だ、という。業務をうまく進めるためには必ず遊びのある段取りが必要である。この力は経験を通して体得する必要がある技だという。
(3)まねる盗む力とは、達人たちが築いた技を盗み取る力であり、忘れ去られつつある大切な教育方法のひとつであるという。今日ハウツーについてはいろんな本などが出ているが、それらを身に付けることは容易でない。やはりうまい人を見ながらその技を盗み取るということが時にわれわれの仕事上必要でないだろうか。
さらに著者はこの本の中で、相手を早く理解できるためのコミュニケーション方法などを興味深い事例で説明している。ワークショップには十分利用できる方法であろう。
詳しくは読んでいただくにして、わかりやすく、実践しやすくまた現代の教育問題についても知るこる面白い本だと思う。
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