「その手はくわなの焼き蛤」で知られる桑名市は、名古屋から鉄道で20分。名古屋市への通勤圏として大規模なニュータウン開発が行われ、人口増加の著しい都市であるが、一方で城下町、宿場町の歴史を有する都市でもある。
2001年は桑名のまちづくりの最初となった「慶長の町割」から400年にあたり、桑名市ではこの年を「平成のまちづくり元年」とし、市民との協働によってまちづくりをすすめていくきっかけとして「平成のまちづくりくわなルネッサンス」として様々な事業を実施した。
この本もその一貫として、市民参加による編集委員会を立ち上げ、取組まれたものであるが、編集委員の桑名に対する熱い思いから、本の構成を決めるまでに時間がかかり、編集委員会22回、そのほかにも現地調査やインタビュー調査、市民参加の試読会などを実施し、2年半かかってできあがったのが本書である。
編集委員には伊勢のまちづくりブックにも関わられた三重大学の浅野先生、埼玉大学の梶島先生にも参加いただき、その経験をいかした提案をしていただき、これまでのまちづくりブックとは違った桑名ならではのものにしようと議論が重ねられた。
その結果、本書では桑名の暮らしの豊かさとまちづくりの歴史に着目し、そこからまちをつくりあげるための様々な力=「まちづくり市民力」を導きだし、この力を知り、身につけ、実践することを「まちづくり極意」として示している。さらに、本書では実際にまちに接近するための手ほどきを「まちを識(し)る術(すべ)」として紹介している。
桑名を題材にしながらも、このプロセスや導きだされた「まちづくり市民力」は、どこのまちづくりにも通じるだろう。
まちづくりコンサルタントとして編集委員会の事務局に参加、一部執筆も担当した。本づくりがこんなに手間がかかるものとは思ってもいなかったが、よい経験をさせていただいた。
この取組みは、本ができれば終わりというものではない。これに活用し、桑名市民に桑名のまちに愛着をもってもらい、「まちづくり」への新たな一歩を踏み出してもらうことが重要だ。
桑名市民のみならず、自分たちのまちを見なおし、新たな「まちづくり」の展開を模索している他のまちのみなさんにも読んでいただければと思う。
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