住民運動必勝マニュアル
 〜迷惑住民、マンション建設から巨悪まで〜
岩田薫 著
出版社:光文社新書 2005年6月20日発行

 この本を読めば、理不尽で納得の行かない公共事業や迷惑施設の開発を住民自らの力で食い止めることができる。この本には、そのための様々な戦略や戦術が多数収録されている。たとえば、ダムなどの無駄な開発による環境破壊を阻止するには、希少種を見つけて環境保護を訴えればよい。生活環境の悪化が懸念される高速道路や新幹線建設から生活を守るには、騒音など基準に違反する環境変化をみつけ、公害だと訴えればよい。ほかにも、高層マンション建設への抵抗方法、区画整理事業への抵抗方法など、ケース別に「闘う法」がまとめられている。筆者の実経験がもとになっているので実に説得力がある。

 しかし、よくよく考えると、このような住民運動は必要ないのが理想なのではないだろうか。そもそも公共事業は国民のためであるし、開発行為なども則る法律をみれば、国民の福祉向上を目的としている。ということは、住民が理不尽だとか納得いかないと思う原因は、行政や法律、そして企業が住民のことをなおざりにしているということ。その中でわが身を振り返ってみる。コンサルとしてできることは何か。行政・住民の間の本来的な位置に立ち戻って、両者のギャップを埋めることではないだろうか。まだまだ、不可解で腑に落ちないことが堂々とまかり通っているこのニッポン、自分にできることは何なのか。そんなことまで考えさせられた1冊でした。

櫻井高志((株)都市研究所スペーシア)/2005.7

 

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