私たちの「いい川・いい川づくり」最前線
「いい川・いい川づくり」研究会 編著
学芸出版社/2004.7.10発行

 いま「川」をめぐる人々の活動がこれほど熱いとは知らなかった。本書は、毎年夏に開催される「川の日」ワークショップの実践レポートである。毎回、全国から70件ほどの川づくり活動に関する応募があり、400〜500人ほどの参加者が2日間のワークショップに集い、発表し、交流する。市民組織の交流会と思いきや、河川管理者の発表も同じようにあることに驚いた。といっても、近年は行政と市民が連携した活動の発表が多くなったそうだ。

 河川区域は河川局の管轄という行政的認識は、歴史の中ではつい最近できたもので、「日本の河川文化は日本の文化そのもの」という著者の一人桑子敏雄氏の言葉は重い。もともと治水・利水といった水の管理は地域運営と不可分であり、そこには日本の合意形成システムが色濃く残る。本書には、40年前に干上がった池が再び湧水して復活した佐賀県の縫ノ池の例が紹介されている。40年もの間空になった池跡を埋め立てずに守り続けた人々の水への信仰と地域社会の仕組みは、同じこの40年間に日本中で我々が失った環境やコミュニティを想うと伝説とするにふさわしい感動を覚える。また、「あなたの思い出を分けてください」と天竜川の思い出の写真集を編纂して流域市民に配った行政の活動も心憎いものがある。河川を日常の市民生活から遠ざけてきた河川行政の方向転換の一端を本書から感じるのであるが、まちづくりにも全く同じことが言えるのではないかと本書をお勧めする。

藤森 幹人(日建設計 名古屋計画室)/2006.4

 

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