人にやさしい公園づくり−バリアフリーからユニバーサルデザインへ |
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著者:浅野房世・亀山 始・三宅祥介 | ||
出版:鹿島出版会 発行:1996年6月30日 |
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この本は身障者、高齢者の意見を多数のせながら、すべての人が利用しやすい公園づくりにどのような配慮が必要かのチェックシートが載せられて、一見、設計のためのマニュアル本のような側面もある。しかし、公園とはそもそもこの忙しく殺伐とした現代社会において、誰もがリラックスして植物や水などに触れあったり、スポーツや遊びを楽しむための場であり、その内容は決して画一的なものではいけない。 つまり公園設計においては、園路勾配を抑え、段差をなくすといった物理的な障害を取り除く(バリアフリー)だけでなく、誰もが自然や遊びを楽しむことができる(ユニバーサルデザイン)発想が必要である。 本書の中でアメリカのランドスケープ計画・設計会社を経営するスーザン・ゴルツマン女史は、ユニバーサルデザインとは「多様性」を持たせること、と定義づけている。ベンチを例に取れば、誰もが座れる一つのベンチを設置することではなく、一つの場所にバラエティに富んだベンチを数多く設置し、誰もがどこかに座れる工夫をすることである。実際の公園設計の中でも、起伏に富んだ園内をとにかくスロープでつなげなくてはいけないような発想に陥りがちであるが、例えば「誰もが自然を楽しむことができる」配慮として、「ここは車椅子でアクセスでき、景色を楽しんだり草花に触れることのできる場所」、「ここは視覚障害者に配慮し、誘導に工夫をこらした花畑」、「ここは自然地形を生かした起伏のある林間の遊歩道」などと多様な施設配置を行い、適切に 誘導することが大切であると感じた。 公園とは誰もが好きで「行ってみたい」と思う場所であることを再認識するとともに、その設計に携わることができることを誇りに感じた一冊である。 |
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小柳太二(株式会社オオバ)/2000.2 |