変革は、弱いところ、小さいところ、遠いところから
著者:清水義晴
発行:太郎二郎社(2002.12.28発行)

 自分と社会の結びつきについて、あまり意識的に考えたことがなかった。この本を読んで、めまぐるしく変化する周囲の環境に、自分が日々振り回されているだけではなかったかと、疑問に思った。NPO活動や学校組織づくり、デザインワークなど、筆者が関わった仕事は多岐にわたる。その中で、競争を勝ち抜くことで築いてきたこれまでの社会とは異なり、人としてごく当たり前の活動や楽しい考え方が共感を生み大きな力となっていく新たな社会が生まれつつあるという。この本には、そんな魅力的な取り組みがちりばめられている。

 住民がまちを知りなおすことから、地域の魅力を発見し、町に対する思いが生まれ、まちを美しくする活動へつなげていった新潟県大潟町の事例。社員の全員が取り組む「一人一研究」制度によって、個人の働き方が変わったり、更には会社全体の活性につながったという事例など、内容は多岐に渡る。そして、その「変革」の始まりは小さな事・存在からである。

 特に興味深い事例は、障害者によって設立された「べてるの家」における取り組みである。この中では、様々な障害をもつ人々が、自分の立場や、自分の経験をよく吟味し、社会と繋がる方法を模索している。そして、自分達に出来ることを見つけ出し、"成功をめざさない"ことを企業理念として据えている。そこには、どうやって生きていくのかという切実な問題を抱えながら、その現場は明るさ、楽しさに満ちている。

 私が今後社会へ踏み出すときに自分に出来る小さなことが、自分を、更には社会を変える大きな一歩になるかもしれない。そのために出来ることとは何か。こんな考えを常に意識する事が、働き方に大きな変化をもたらすのではないだろうか。


社団法人 地域問題研究所 インターン生 二村春香(岐阜大学大学)/2005.9

 

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