元気なNPOの育て方
著者:戸田智弘
出版:日本放送出版協会、発行:2005年9月10日
 阪神淡路大震災の経験を踏まえ1998年にNPO法(特定非営利活動促進法)が施行されてから、NPOの数は増えつづけ、今やNPOはまちづくりにおいても重要な役割を担うようになってきた。本書では、第T部で事業系NPOや現状の社会システムを変えていこうという志を持ったNPO、ユニークで面白い活動をしているNPO、新しいビジネスモデルを示したNPOなど、約13のNPOが紹介されており、第U部ではNPO成功への戦略が謳われている。

 第T部では、それぞれのNPOの活動のきっかけや視点、内容などについて、ルポライターである著者が代表やコアメンバーにヒアリングした結果が紹介されている。行政からどのようなアプローチがあったのか、活動をしていてうれしかったこと、どうしても忘れられない思い出などのエピソードが紹介されており、単なる事業紹介で終わらないところが読み物としても非常におもしろい。

 第U部ではNPOの存在意義から始まり、NPO成功のための14のチェックポイントが紹介されている。ここで、何を持って「成功」とするかだが、本書では次の2つの視点がクリアされることとしている。一つ目は「資金力・専門性・組織力・マネジメント力をもった組織であること」、二つ目は「企業や行政とは違う論理で、企業や行政では出来ない事業をすること」である。この2つの視点にのっとり、14のチェックポイントを読み進めていくと、第T部で紹介されているNPOの事例に置き換えて分かりやすく説明されており、なるほどとすんなり納得させられる。

 一時期(今でもそうだが)、NPOといえば“自分を犠牲にして他者や社会の為に働く”という感が強かったが、現在では、少し時間もあるし“面白いから”“楽しいから”“自分の成長のため”というちょっとした興味、関心がきっかけになる人が増えているようである。地域と一体になったまちづくりを進める上で、今後ますます係わり合いの出てくるNPOについて、より理解を深めるため、また初めて(改めて)NPOとは何ぞや?を知りたい人にもお勧めしたい一冊である。
安藤ふ季(社団法人 地域問題研究所)/2007.4



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