「団地再生」甦る欧米の集合住宅

著者/松村秀一(東京大学大学院建築学専攻助教授)
出版社/鰹イ国社  2001年7月第1版発行


 高度成長時代に郊外に膨張しつづけた住宅地が人口減少時代にスラム化するのではと問題意識をもっていた折に、愛知まちコン2001年公開シンポジウム「名古屋圏の都市居住を考える」の企画に関わり、そしてこの本に出会った。

 本書は、ゴーストタウン化した「捨てられた住宅地」が欧米で増えつつある現実をふまえ、これらを克服した欧米の団地再生事例を紹介している。「捨てられた住宅地」は同時にコミュニティの問題でもあり、団地再生事業はコミュニティ再生を目指している場合も多い。したがって、団地再生で最も重要な問題は、「再生のデザインや技術の問題ではなく、資金とプロセスの問題である」という視点で事例が考察されている。そして、これからニーズが高まる団地再生事業に求められる専門家像として、信頼性の高い住環境診断の専門家、的確な再生提案ができる技術的専門家、住民の合意形成をはかるコミュニティの専門家が挙げられ、特に新築に比べて再生では「住民とのコミュニケーションの専門家」が新たに必要とある。

 我々コンサルタントもプランナーである以上にコミュニケーションの専門技術が求められる時代かもしれない。ちなみに、著者とともに本書の共同研究に参加した椙山女学園大学の村上心助教授には冒頭のシンポジウムのパネラーとしてご参加いただくこととなった。


藤森幹人((株)日建設計 名古屋)/2002.6



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