コンパクトシティ
〜持続可能な都市像を求めて〜
海道清信著
学芸出版社/2001.8
 コンパクトシティ(Compact City)とは、主にヨーロッパで発生した都市設計の動きのことで、一般的にはまだ馴染みが薄いものの、最近の環境問題や少子高齢化、財政危機への対応といった問題意識を背景に、都市計画や環境計画、都市デザインなどの分野において大きな関心を集めている。最近ではその理念から具体的な政策へと展開しつつあり、中心市街地の活性化や持続可能(サスティナブル)な社会の実現へ向けて非常に有効な概念として注目されている。

 本書は十の章から成り、コンパクトシティが注目される背景から、歴史的な概念、イギリスやドイツ、オランダなど諸外国におけるコンパクトシティ政策を紹介するとともに、コンパクトシティを巡る論争やわが国におけるコンパクトシティの考え方、コンパクトシティの空間像とは何かなどを交え、最終的に「日本型のコンパクトシティにおける10の原則と三つのモデル」を提案している。
 それは経済的、社会的、環境的に持続可能(サスティナブル)で活気と安らぎのある都市・地域づくりであり、その基本コンセプトはわが国の都市空間ストックが持つ伝統的な価値を継承し、質を高めることとしている。そこでは、徒歩や自転車を中心とした圏域に生活サービスが確保され、自然と共生するヒューマンスケールの都市、地域空間が必要であるとしている。

 本書は、まちづくり関係者はもとより、専門家でなくてもそれなりに理解できる内容となっており、コンパクトシティの概念だけではなくその実体とは何か?を理解するうえで非常に有益な材料を提供している本である。
葛山 稔晃(鞄s市造形研究所)/2006.4



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