ビオトープネットワーク
編者: 財団法人 日本生態系協会
出版: ぎょうせい 1994.3.25
 この本は、私が環境共生計画に携わり少ししてから読んだのですが、非常に感銘を受けたことを記憶しています。
 生態系のバランスがいかに大切であり、かつ、微妙なものかをこの本は教えてくれました。私たちが計画している、まちの基盤となる部分の計画で、配慮に欠けていた点を軌道修正するなど、修復可能な開発を心がけることを再認識する機会となりました。
 人は自分たちの生活を豊かにするため、森林を開発し、川を汚してきました。ただし、その結果が大きな付けとして自分たちに戻ってくることを見落としていたと思います。また、どのようなシステムにより、どのような形の付けが戻ってくるのかという知識がないためにその恐怖もありません。
 内容の中で、特に「表土が生態系を支える」という項目では、片方の足の下に26万匹の小動物と175億個の細菌が住んでいるという話に驚愕しました。また、多孔性、多様性といったことがどうして良好な環境に結びつくかも教えてくれました。
 人は景観というみてくれと、住環境という人間のみの環境ばかりを考えて、良好な自然環境を破壊しつつあります。古代の人々は自然の恐ろしさを神の仕業とし、節度をわきまえて暮らしていましたが、科学の発展と共に人は欲望を抑えきれなくなったようです。一人でも多くの人がそのことに気付き、行動をおこしてくれればと思いつつ、この本を紹介したいと思います。
伊藤智和(宅地開発研究所)/1999.11



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