本書では、幻となったプロジェクトや競技設計の落選案等が紹介されています。
具体的には明治以降の数々のお蔵入りプロジェクトを扱っていて、それは明治維新直後の壮麗なバロック風官庁街計画だったり(予算がとても足りずに断念)、琵琶湖大運河計画(運河によって琵琶湖と日本海をつなげてしまおうという構想)だったり、戦時中に日本と朝鮮半島をつなぐ弾丸列車計画だったり、どれもこれも現在では考えもつかないほど、大胆なものばかりです。
通常の都市論の書籍では、「今ある雑踏」や、「かつてあった懐かしいまちの姿」について語るのに対して、本書が主題としているのは、ありえたかもしれないけれど、そうはならなかった日本です。まちづくりの仕事に携わっていて、あの時の提案が実現していればまちはどう変わっていただろうかと、想像力をかきたてる書籍であると思います。
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