名古屋芸術の杜をみんなでつくる会
〜久屋大通公園(桜通以北)をフィールドとした取り組み〜/名古屋市中区

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公園/市民

    

■はじめに

 まちづくりコンサルタントの仕事は、行政の委託業務が多いですが、市民からの自発的な活動にも注目し応援しています。
 今回紹介する取り組みは、行政の計画ではなく市民の自発的な活動であり、コンサルタントが業務として関わっている訳ではありません。しかし、コンサルタントである私が名古屋市内の区役所事業などの業務経験を活かしながら、市民側からスタートさせたものです。
 市民団体の活動の概要を先に示した上で、活動のきっかけや運営のポイント、コンサルの役割について説明します。

■名古屋芸術の杜をみんなでつくる会の設立

 久屋大通公園の桜通り以北にあるロサンゼルス広場、いこいの広場、リバーパーク、シドニー広場には、姉妹都市から贈られた数々の造形作品あり、水と緑の素晴らしい環境があります。
 文化の薫り高い名古屋の創造発信拠点として、これらの公園を積極的に活用し、芸術活動を誘発することで質の高い市民の憩いの場を創出しようとの考えで、ここを「名古屋芸術の杜」と名付け、まちのイメージをアップさせ、「公園の健全化」を図り、その活動を通して都心部におけるコミュニティの回復を図ろうと、2005年4月17日、「名古屋芸術の杜をみんなでつくる会」を設立させました。

■活動概要

 久屋大通公園のロサンゼルス広場、いこいの広場、リバーパーク、シドニー広場を中心とする地域の良好な住環境を保ちながら、芸術を通じてこれらの公園の健全化をはかるとともに、国際交流に寄与し、地域を活性化していくことを目的として活動しています。
 以下の大きな三つの活動を柱にしています。

1.緑の保全活動 〜都心の緑を守り育てる〜

 都心部の公園・緑地のあり方を学習し、ガーデニングの実践をしています。多くの市民に都心の貴重な緑地を意識してもらうため、公募で集まった市民により「ひまわり」の苗植えを行っています。
 また、名古屋市緑のまちづくり活動承認団体として、久屋大通公園に季節の草花を咲かせる取り組みを始めています。


ガーデニングの実践
「ひまわりの里親になろう!」



2.芸術活動 〜芸術でまちの魅力を高め、広く市民に知ってもらう〜

 公園の中で参加型のアートイベントを開催することで、公園の魅力を市民に広く知ってもらい、さらに公園の魅力を高めていきます。
 毎年アートギャラリー「ひまわり展」を開催。400点以上の市民の作品と名古屋市の姉妹都市の子供たちの作品を公園に展示しています。


名古屋芸術の杜コンサート


アートギャラリー「ひまわり展」

3.国際交流活動 〜姉妹都市を中心に国際交流を進める〜

 名古屋市の姉妹都市のモニュメントが多く設置されている公園であることを広く市民に知ってもらい、市民レベルでの国際交流を進めようと地道な活動を始めています。
 姉妹都市の文化を学習したり、周年記念フェスティバルを開催しています。


名古屋市・メキシコシティ
姉妹都市提携30周年記念
「オーレ!メヒコ」

名古屋市・南京市
友好都市提携30周年記念
姉妹都市フェスタ「ニーハオ南京」

HPは、http://www.rinkei.co.jp/geijutsunomori/

■市民団体誕生の経緯 一市民の想いから市民団体へ

 この公園のすぐ目の前に住んでいる主婦が、ここでコンサートが開催されたら素敵だろうと思い、同級生である私が音楽活動をしていることを思い出して相談を持ちかけたのが設立の一ヶ月前でしたから、設立の準備期間は極めて短かいものでした。私は、既に千種区の「やまのて音楽祭」など音楽でまちの魅力アップを図ろうと各地で取り組んでいましたので、まちの資源に恵まれているこの地域では素晴しい展開が期待できると直感しました。そして、コンサートを市民の手で実現させるために、市民団体を立ち上げることを勧めました。 まず、コンサートの名称が大事だと思い、「名古屋芸術の杜コンサート」と名付けましたら、彼女は「名古屋芸術の杜構想」と打ち出して、企業や行政などへ精力的に協力をお願いし始め、知人に声を掛け、会の設立に至ったのでした。
 会員数20名程度でのスタートでしたが、趣旨に賛同する市民が口コミで広がり、設立後約1ヶ月半に開催した「名古屋芸術の杜コンサート」(6月4日開催)の時には、会員数は200名を超えていました。
 ここで感じたのは、地域資源と地域の課題を的確に捉え行動することで賛同者が得られるのだということでした。

■活動継続のための補助金活用

 市民団体の立ち上げ時は、参加者の想いも強く勢いがありますから何とかなるものですが、活動を継続させていくのは大変なことです。まず活動資金の問題があります。
 市民団体設立時に、資金の当てがあったのではありません。先にイベントを設定したうえで、会費を集め同時に寄付金も募りました。会費を低く設定したため、多くの会員を集めることができ、具体的なイベント企画があるため寄付金も集めやすかったと思います。イベントチラシの協賛広告も集めました。そして、名古屋都市センターまちづくり活動助成「はじめの一歩助成部門」に応募し補助金を獲得しました。翌年も、名古屋都市センターまちづくり活動助成を受け、姉妹都市関係のイベントでは、名古屋市国際交流活動助成を受けました。その翌年も同様の助成を受け、その後、愛・地球博開催地域社会貢献活動基金(モリコロ基金)を受けることになり現在に至っています。
 補助金は、資金的に助かるだけでなく、活動を計画的に進めていくのに役立っています。申請時に事業計画を提出する必要があるため、常に先を考えた活動になり、活動の目的、目標を再度認識するよい機会になります。また、事業報告などのために、活動の自己評価をすることになり、活動の総括もできます。

■コンサルタントの役割

 この活動は、行政が始めたものではなく市民の任意活動で、私の関わりは個人的なものですから、コンサルタントとして十分な役割をしているとは言えませんが、いくつかのポイントはあると思いますので、整理します。

1.市民団体の立ち上げ

 公共性は行政だけにあるのではなく、私的な活動の中から発生する市民的公共性もあることが指摘されています。
 個人が公共を考え、それを実行し実現していくためには専門的な知識も必要です。 行政が取り組んでいることや他の市民活動などを把握し、目的に対しふさわしい団体設立方法をアドバイスしました。

2.活動目的の明確化

 活動を始めると、「あれもやりたい」「これもやりたい」と地域にとって良いことをいろいろ思いつきます。良いことはどんどんやれば良いのですが、他人に活動を説明する時や活動の評価を受ける時などは、活動目的を明確化した上で、各事業の位置づけをきちんとすることが有効です。補助金の申請には特に重要で、活動の骨格を整理する役割を果たしました。

3.活動のPR

 活動を継続していくためには、イベントの集客、会員募集などのため広報が重要です。コンサルタントは、行政や様々な市民団体と関わりがあります。いろいろな場面で、活動をPRすることで、理解者を増やし、新しい連携などの可能性をつくります。
 また、コンサルタントは他の事例を知っているので、活動の客観評価もしながら説明できます。
 この面白講座の紹介は少し主観的だったかもしれませんが、ご参考になれば幸いです。

川本直義((株)エルイー創造研究所)/2009.9

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