はじめに
ゆとりある住まいの実現にあたっては、住まい手が住まいに対する正しい知識を持ち、よい住宅をつくるとともに、適切に維持管理していく必要があります。そのためには、住まい手が適切な判断ができるような情報提供が重要です。
愛知県では1996年に策定した「住まいるプラン愛知−愛知県住宅マスタープラン」において、「住まいに関する情報提供体制の整備−住まいるオン・デマンド戦略-」を重点施策の1つとしてあげており、その後の住宅マスタープランにおいても、住情報の提供は重要な施策の1つとなっています。
ここでは、愛知ゆとりある住まい推進協議会(以下、「ゆとり協」)を中心に行われてきた住情報の提供にあたって、コンサルタントとしてどのように関わってきたのかを紹介したいと思います。
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1.愛知ゆとり住まい推進協議会(ゆとり協)とは
県下の住宅・宅地関連の各団体・企業等の支援、協力により1988年7月に設立された協議会で、豊かさの実感できるゆとりある住まいづくりを推進するため「ハウジング&リフォームあいち」の開催、優秀な新築・リフォーム事例の表彰、住まい手サポーター制度の普及、小冊子やホームページ等による情報提供等に取り組んでいます。
他県でも同様の協議会を設置しているところがありますが、ホームページ等による活動状況をみているとそれほど活動は活発とはいえないのに対し、4つの部会(「住宅賞・講演会部会」「住情報部会」「リフォコン部会」「リフォーム推進部会」)を有する企画委員会とハウジング&リフォームあいちの開催のための特別委員会を設置し、取り組んでいるゆとり協の活動は、全国のトップクラスといってもよさそうです。
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2.ホームページによる情報発信−「あいち☆すまい・まちづくり情報広場」
「住まいるプラン愛知」(1996年策定)の「住まいるオン・デマンド戦略」の具体的な取組みとして行われたのが、「あいち☆すまい・まちづくり情報広場」(以下、「情報広場」)というホームページの立ち上げです。愛知県における住まい・まちづくりのポータルサイトをめざし、住まい・まちづくりのリンク集として1998年10月27日に開設されました。
(財)愛知県建築住宅センターが開設者となり、ゆとり協に運営を委託。ゆとり協の「住情報検討部会」(当時)において、内容や更新体制の検討が行われ、更新作業を行うための運営スタッフを指名。定期的にリンクの追加や更新が行われる仕組みが作られました。
しかしながら、当時はまだホームページを有するところが限定されており、有益な情報を持っていながら、それがホームページに掲載されていないということがよくありました。そこで、愛知県では、住宅マスタープランの推進事業の1つとして、「住情報提供推進のための連携方策検討調査」を実施することなり、その調査を担当することとなりました。
この調査では、建築設計やリフォーム、マンション管理など7つのテーマを設定し、それらに関連する団体に働きかけ、情報提供での連携方策を検討しました。各団体によってホームページによる情報提供の取組みは様々であり、すでにホームページを設置しているところもあれば、全く手付かずといったところもありましたが、最終的にはこの取組みを通じて、団体のホームページが立ち上がり、その情報にリンクを設定するという形で「情報広場」の充実を図ったり、これら団体の中から、情報広場の運営スタッフとして関わっていただく方も生まれ、体系的なリンク集構築という点でも成果をあげることができました。私自身も調査終了後も運営スタッフとして、更新作業に関わりました。
当時は、ホームページに掲載されている情報がまだ少なく、検索エンジンの精度も高くないことから、住まい・まちづくりに関する有益な情報へのリンクが体系的に整理された情報広場は使い勝手のよいページとして利用されたのではないでしょうか。また、個人的には、この調査を通じて様々な団体の方とのネットワークを作ることもでき、有益な取組みであったと思っています。
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3.ゆとり協 住情報のあり方検討
情報広場の開設から8年が経過し、ホームページをとりまく環境も様変わりしました。インターネットに情報があふれ、新たな情報がどんどん提供され、精度の高い検索エンジンによってその情報を簡単に引き出せるようになりました。運営スタッフによる更新作業が行われていた情報広場は2004年度からその体制がなくなり、更新頻度が減り、利用も減っていました。
一方、ゆとり協としてホームページを有していましたが、活動の一部しか紹介されておらず、また更新体制が不十分であり、迅速な更新ができれおらず、毎年、住まいに関する基礎知識の小冊子が新しいものに更新されているのにも関わらず、ホームページには古い情報のまま掲載されているといった課題を有していました。
このような中で、2006年度にゆとり協の住情報部会において「住情報のあり方検討調査」を実施することとなり、そのお手伝いをさせてもらうことになりました。
この調査では、ゆとり協の会員及び愛知県内市町村の住情報提供の実態・意向調査を行い、その結果を踏まえ、情報広場とゆとり協のホームページを統合し、ゆとり協のホームページを新たな「あいち☆住まい・まちづくり情報広場」とすることとしました。
毎年、発行している小冊子の内容を中心に、その関連情報へのリンク集を設定するという形で利用方法を明確化するとともに、ゆとり協の活動として、住宅賞、リフォームコンクールの作品紹介、住まい手サポーターの名簿掲載、サポーター検索の充実など、より使い勝手のよいページとしました。
2007.3.23に全面リニューアルを行いましたが、その後の更新についても、迅速な対応が必要であることから、業務として更新作業を受託し、適宜更新を行っています。アクセス数は増えていますが、より利用されるページとするため、アクセス統計の分析を行い検討していくこととなっています。
あいち☆すまい・まちづくり情報広場のページはこちら
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4.ゆとり協20周年企画誌の取組み
ゆとり協では、2008年に設立20周年を迎えることとなり、その20年記念企画誌の取組みが進んでいます。
ゆとり協の企画員会幹事会において検討が行われ、ゆとり協がこれまで行ってきた「すまいる愛知住宅賞」及び「わが家のリフォームコンクール」の入賞作品の住まい手の方にインタビューを行い、住まい手の声を紹介することで、これからの住まいづくりの参考になるような冊子をつくろうということになり、2007.11〜2008.1にかけて17件の住まい手インタビューを実施しました。
インタビューの前に設計者、建築主の方に対するアンケートを行い、いくつかのタイプの中から典型的な事例を抽出し、協力をお願いしました。これらの賞は設計者が表彰されるケースが多く、建築主の方はあまり表にでてきませんが、インタビューさせていただいた方はいずれも住まいに対する思い入れが強く、その思いを受け止める設計者とうまく出会えたことによって、その思いが実現し、ライフスタイルにあった豊かな住まいを手に入れることができたようです。インタビュー記事は、編集者にとりまとめていただいていますが、そのあたりをうまく読み手に伝えていければと思っています。
新築10件、リフォーム7件の住まい手インタビューの前には、それぞれの賞の審査委員をやっていただいた先生に総括的な文章も書いていただくこととなっています。今回は原稿のとりまとめまでが担当であり、編集デザインまでは関与しないことになっていますが、この取材を通じて、様々な方の話を伺うことができ、非常に興味深い取組みでした。2008.10の発行予定を待ち遠しく思っています。
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石田富男((株)都市研究所スペーシア)/2008.2 |