ゆるやかな再開発事業の試み/愛知県西春町

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パティオ事業/優良建築物等整備事業(優良再開発)

小さな再開発事業

 再開発事業と聞くと、大きな街区で、多くの土地建物所有が集まり、大きなビルを共同で建てる事業を想像する方が多いと思いますが、今、愛知県西春町で進めている再開発は3人の権利者による、小さな事業です。この再開発は「西春駅前商店街パティオ事業」といいます。名前が示すようにパティオ(中庭)があり、それを囲むように3人の権利者の建物が、それぞれ自分の土地に別棟で建っています。2階レベルでは3棟を結ぶ共用デッキが架けられ、共用のエレベーターや階段で行き来できます。建物は2階建、4階建、5階建で、用途は店舗や賃貸住宅、オーナー住宅です。

優良建築物等整備事業

 この事業では、優良建築物等整備事業(優良再開発)という制度を活用しています。一般的に大規模な再開発では市街地再開発事業という手法が取られます。これは、都市再開発法という法律に基づき、さまざまな手続きを踏みながら進めて行くものですが、この優良建築物等整備事業は、手続きが簡易であるため、規模の小さいものや民間主導の開発で多く活用されてきました。

柔軟な共同事業

 再開発事業の大きなメリットに補助金が挙げられます。事業の規模や内容にもよりますが、事業費の2割前後が補助率として一般的です。こうした補助を得るためには、まず再開発事業として権利者の合意が得られる事業を組み立てなくてはなりません。この難しい問題に対して、西春町での再開発では、3人の要求に柔軟な対応の取れる事業とするため、優良再開発の市街地環境形成タイプの適用を受けました。これには3人による建築協定の締結が必要ですが、建築協定の範囲内なら自由に規模や用途を計画し、さらに将来的にも自由に個別建替えができる建築形態とすることができました。
 社会情勢の変化と共に、近年では大規模な再開発が推進しにくくなってきています。今回紹介した「西春駅前商店街パティオ事業」のような、ゆるやかな再開発事業が、これからのまちづくりに必要となってきています。

堀内研自((株)都市研究所スペーシア)/2004.1

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