まちづくり活動団体の育成/名古屋市瑞穂区

<キーワード>
パートナー/ワークショップ/手づくりMAP

はじめに

 自治体が策定した事業計画を協働で進めるため、行政のパートナーとなる市民団体を育成しようとする場合があります。形式的な協働にならないために、自主的で公共性をもった活動のできる市民団体を育てていくことが大切です。
 名古屋市瑞穂区の「瑞穂うるおいまちづくり会」は、名古屋市の総合計画で位置づけられた事業の中で、市民が自主的に活動を開始した団体です。この団体が生まれた経緯をご紹介します。まちづくり団体育成の参考にしていただけたら幸いです。

背景

 名古屋市瑞穂区では、特色ある区づくり事業の一つとして「伝統的庶民文化の復活・継承事業」を行っています。この事業は、区の貴重な財産であるまつりや芸能、時をきざんだ建築物など区内地域に残る庶民文化を後世に伝えるために、情報収集・調査などを市民とのパートナーシップで進めているものです。
 平成12・13年度には、公募市民による「御剱見て歩き隊」により御剱地区を中心に情報収集を行い、平成14年度には、まちの魅力発見ワークショップ「レトロな瑞穂区を探そう!」を実施し、汐路地区の昭和初期の建物に注目して情報を収集しました。

ステップ1 きっかけづくり

まちのお宝を見つける

 地域のことを考えていく市民グループを育てていくためには、まず市民同士が共通認識をもてるようにすることが必要です。自分たちのまちはどんな特徴があるのか。どんな価値があるのかを知ってもらうことから始めます。地域資源を的確に捉えたテーマ設定により、まちの魅力再発見ワークショップを行います。
 2002年11月に開催した「まちの魅力再発見ワークショップ」では、共通の課題として「洋館付き和風住宅」を見つけて歩くことでした。散策対象地域に多く存在することを事前に調べてわかっていたからです。参加者は、地域に長く住んでいたけど、言われてはじめて気付いたと驚きを感じていました。ワークショップはグループに分かれ、一日で簡単なデータシートをつくり、即席ガイドブックを完成させました。


お宝を発見したら写真撮影


即席ガイドブックを作成中

ステップ2 まとめが大切

みんなで報告書づくり

 「まちの魅力再発見ワークショップ」が参加者に好評であっても、一回きりのイベントでは、まちづくりの仕組みには発展しません。地域の人たちが同じテーマで何回も顔を合わせることで、市民同士の会話を生み出し、地域の価値を共有した市民を育てていきます。
 11月のワークショップでつくった即席ガイドブックを、きちんとした報告書にまとめようということで、2月にワークショップ参加者が再び集まり、前に集めたデータを分類し取捨選択しました。そして、もっと知りたいとの意欲から一軒づつ取材に行こうということになり、担当を決めて次回その結果を持ち寄りました。この取材を通して直接まちの人たちが話をすることができ、だんだん変わっていくまちについてみんなで話し合うきっかけとなりました。


どうまとめるか作戦会議


データシートの分類作業

ステップ3 評価されることで前進

自分たちのまちに誇りを感じて自主的な活動へ

 「まちの魅力再発見ワークショップ」で見つけたまちの資源について、参加した市民が自ら報告書をまとめることができれば、参加者は大変満足が得られるでしょう。しかし、参加者だけの自己満足で終わってしまう恐れがあります。他の人から評価を受ければ、有能感や有効感を感じることができ、活動の継続も意識することになります。
 2月から始めた報告書が完成し、5月にワークショップ参加者が再び集まりました。自分たちが汗をかいて集めた情報が冊子になったことに充実感を持ちました。近代建築専門の大学の先生からこの報告書の価値についてお話をしていただき、参加者は自分のまちに誇りを感じ、もっとまちのことを知りたい、伝えたいという意欲が湧きました。そして、地域の自主的な集まりにしようということで話がまとまりました。
 こうして、2003年6月、継続してまちの魅力の発見・創造・発信を行う市民の会として「瑞穂うるおいまちづくり会」が立ち上がりました。

「瑞穂うるおいまちづくり会」の活動

 これまでは、瑞穂区役所が主導で企画実施をしましたが、市民の会が中心に企画し、区役所が協力する形になりました。

まちの魅力再発見ワークショップ「レトロな瑞穂区を探そう!PartU」

 2003年11月8日実施
 参加者を公募しましたが、ちょうど選挙と重なったため、区役所職員が参加できず、受付から進行まで全てまちづくり会の手で進めることになりました。前年度に引き続き、レトロな瑞穂区を探しながらまちを歩き、データシートを作成しました。


ワークショップの受付


お宝撮影中


データシート作成作業中


お宝の場所を地図にプロット

レトロな瑞穂区のMAPをつくろう!

 2004年3月から5回のワークショップを開催しました。
 2年間にわたって集めたデータシートをもとに、成果を市民の方に伝えるため、手づくりMAPを作成することにしました。データシートに掲載されている住宅の写真や住所は、防犯のこともあり公開することはできないので、写真をイラストにし、住所は明示せず、あいまいな位置にイラストを貼りこむことにしました。イラストは参加者が手分けして描きました。そして、参加者が掲載許可をもらいに歩いて回った結果、50以上のイラストが掲載できました。また、町名や橋の由来など地区の歴史も調べ、MAPの裏面に掲載しました。


MAPの方針をディズカッション


MAPにイラストを貼り込み作業中


参加者が描いたイラスト


完成した手づくりMAPと一緒に記念撮影

 瑞穂うるおいまちづくり会は、手づくりMAPの完成で、ますます自主的に活動する市民団体となり、自治体のパートナーとしての力をつけました。これからの活躍が期待できます。

川本直義((株)エルイー創造研究所)/2004.7

▲トップページに戻る▲