吹奏楽とまちづくり/名古屋市名東区&東区

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吹奏楽/まちづくり応援団

T はじめに

 吹奏楽は中学校、高等学校で大変盛んに行なわれています。
 愛知県教育委員会が県立高等学校(全日制)154校4校舎に対して行なった「文化活動に関するアンケート」(平成11年11月現在)によると、部活動(ないし同好会)の実質的な活動人数は「吹奏楽」が4,395人で最も多く、2番目の「美術工芸」2,355人の約1.9倍です。音楽関係の部活動の合計6,596人(ただし兼部も含めた数字)の中に占める「吹奏楽」の割合は約67%です。(生徒在籍数は127,566人)
 まちには吹奏楽の経験者が結構いるのです。その吹奏楽をまちの資源と考え、まちづくりに生かしていこうという取り組みを2事例ご紹介します。
 一つは、吹奏楽そのものをまちづくり活動の中心に置いている名古屋市名東区の例、もう一つは、まちづくりの中で市民バンドがコアメンバーとして参画している名古屋市東区の例です。

U 事例紹介

(1) 名東区まちづくり応援団(名古屋市名東区)

 「名古屋新世紀計画2010」に示された名東区の魅力づくり「わいわいスタッフ育成事業」を推進するために、名東区役所まちづくり推進部が始めたのが、区内の吹奏楽団を核とした「まちづくり応援団」の育成でした。

社会人と学生の交流の場

 名東区は、中学、高校で吹奏楽が特に盛んなまちです。また市民吹奏楽団も活発に活動しています。しかし、世代を越えた交流はできていませんでした。まちづくり応援団の活動によって、中学生と社会人が同じステージで演奏したり、そのための練習で交流が生まれています。

プロの音楽家の指導

 芸術分野をまちづくりに生かすには、創造されるものの質を高めることが大切です。参加している人が充実感を持ち、継続していくために、プロの音楽家の指導を入れています。
 写真1,2は、吹奏楽クリニックを開催し、楽器ごとの講習会、全体指導などを行なったものです。

大編成で市民にアピール

 まちづくり応援団は、学校の吹奏楽部や社会人の市民バンドが参加しているため、大人数です。名東区民まつり(写真3)、名東の日(写真4)では150人くらいの大編成で演奏し、市民にアピールしました。


吹奏楽クリニック クラリネットの指導(2001.12.16)


吹奏楽クリニック 合奏(2001.12.16)


名東区民まつりの大合奏(2002.11.3)

名東の日応援演奏(2003.5.10)


新たな協働の形を目指して 〜市民、学校、行政、専門家の協働によるまちづくり

 「まちづくり応援団」は、単に吹奏楽をやっている人たちの集まりではなく、そこにいろいろな人たちが居合わせる場であり、そこから地域の資源が生み出されることを目指しています。具体的には、非常に質の高いジュニアバンドが地域資源となるための仕組みをつくるため、市民、学校、行政、音楽家、まちづくりコンサルタントなどが協働していける形を見つけようとしています。

(2) ヤダ川発見隊(名古屋市東区)

  「名古屋新世紀計画2010」に示された東区の魅力づくり「ヤダ・リバーサイド・アメニティづくり」を推進するために、東区まちづくり推進部が始めたのが、「ヤダ川発見隊」です。多くの市民に身近な矢田川を知ってもらい、親しんでもらうことが目的です。その発見隊の活動に参加し常に元気を与えているのが、東区で活動を始めた市民吹奏楽団です。

コアメンバー会議に参加、スタッフになる

 市民吹奏楽団の団員の居住範囲は広範囲で、練習場が東区であっても東区の住民が多い訳ではありません。しかし、楽団が東区のまちづくりに関心を持つことは大歓迎です。この市民吹奏楽団は、ただ演奏機会を得るだけでなく、まちづくりのコアメンバー会議にも出席しスタッフになっています。そのため、イベントの進行の中で効果的に音楽演奏をするアイディアも出てきます。

生演奏で会を盛り上げる役目

 まず、ヤダ川発見隊の結成式では金管楽器によるファンファーレを行いました。(写真5)
 「ヤダ川交流会」を過去2回開催しましたが、単純な報告会、シンポジウムのようなものにしたくないということで、吹奏楽の応援演奏、クイズ大会のバック演奏などをやり、生演奏で表彰式をするなど会が盛り上がりました。(写真6)
 ワークショップの昼食休憩でのアンサンブルは大好評でした。(写真7)
 川遊びの後に夕暮れコンサートを開催し、矢田川の楽団であることを印象づけました。(写真8)


ヤダ川発見隊結成式のファンファーレ(2001.9.8)


ヤダ川交流会のクイズ大会の様子(2003.1.18)


ヤダ川お宝発見ワークショップの昼食時(2003.5.17)

夕暮れコンサートの様子(2003.7.26)


地域に親しまれる楽団へ

 ヤダ川発見隊の活動にいつでも参加している吹奏楽団は、地域(矢田地区)での認知度が上がってきました。吹奏楽団が矢田地区にある東文化小劇場で自主的に開いた演奏会に、地域の方がたくさんやってきて、超満員になりました。

V なぜ吹奏楽がまちづくりに生かせるのか

世代間交流ができること

 吹奏楽はオーケストラに比べると扱いが簡単で、小学生でも始めることができます。そして、中学、高校では全国どこでも大変盛んです。市民バンドも各地にあり、社会人になってからも続けていくことができます。吹奏楽の特徴は初心者でも参加しやすいことです。そのため、世代を越えて一緒に演奏することができます。

どんなジャンルでも演奏できること

 吹奏楽というとクラシック音楽をイメージする人も多いと思いますが、実際には映画音楽、アニメ主題歌、ゲーム音楽、ジャズ、ロック、民謡など様々なジャンルの演奏が可能な形態です。そして、流行の曲はいち早く吹奏楽の楽譜が出版されるのです。時と場合により選曲し、どんな人でも楽しませることができます。

室内でも屋外でも演奏できること

 コンサートの多くは室内での演奏ですが、吹奏楽は屋外の演奏にも適しています。高校野球、甲子園は、吹奏楽の応援演奏も楽しめます。各種まちづくりイベントは屋外が多いので、大きな音で演奏できる吹奏楽は優れています。パレードのできる楽団はまちでは特に人気があります。

大編成でも小編成でも演奏できること

 吹奏楽の編成は大変自由度が高いです。同じ楽器を何本も重ねて大編成の大音量も可能ですし、各楽器1本づつの小編成のアンサンブルも可能です。木管楽器、金管楽器、打楽器の各種アンサンブルもでき、空間に応じてフレキシブルに対応できます。

 このような特徴を持つ吹奏楽は、まちづくりイベントのどんな場面でも対応が可能であるため、「まちづくり応援団」として常にまちづくり活動とセットで考えてみたらいかがでしょうか。

川本直義(エルイー創造研究所)/2003.7

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