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合意形成
再開発事業において最も重要な場面は権利者の合意形成である。再開発の合意形成には「再開発によるまちづくりを目指す」「再開発事業に参加するか否か」「施設内容の検討」「個々の権利の取り扱い」など事業の進捗にあわせ数々の段階がある。総論段階では賛成であるが、自分の権利にかかわると簡単には同意できないのが常である。原則的には段階を追ってすべてに合意がなければ再開発事業は完成しない。再開発事業が長期化する一つの原因である。この合意形成は、権利者のまちづくりへの意思をいろいろな面で確認し、尊重するための重要な作業でもある。
合意形成が進まない理由としては
・再開発事業がよくわからないことへの不安
・再開発事業によって得られるメリットが実感できない
・共同化のわずらわしさ
・権利の自己主張
・現状固執
・できた建物を運営する地権者法人への経営不安
・事業資金融資にあたり担保の提供が必要となり、資産を消失するという不安
・行政不信、権利者間の不信
などが考えられる。これらの不安等を解消し、再開発事業の目標を共通のものにするには、
1)まちづくりに取り組んだ時の初心を尊重した開発の目標像、
2)地域住民の期待するまちづくりに参加している自負、
3)再開発事業の役割と仕組みの理解、
4)補助を初めとする各種支援の利用、
5)権利についての考え方でゴネ得はないことの確認、
6)権利変換による床は相続、担保の対象となる、
7)再開発の施設内に権利者用の住宅を計画できる、
8)施設経営は余裕を持った計画で組み立てる、
などについて我々コンサルタントがわかりやすく伝えることが必要である。
それと共に合意形成にとって重要なことは、目的に向かって自信を持って誘導するリーダーまたはリーダー層(時として行政)の存在である。よそ者であるコンサルタントでなく、地元の代表者が言うんだから間違いない、と感じることは合意形成にとって大きな力となる。コンサルタントは、リーダー(層)に対して適切なアドバイスを行い、リーダー(層)が確信を持って他のメンバーを誘導できる関係を形成しなければならない。
また、権利者間のコミュニケ―ションを活発に行い、信頼できる人間関係を築く場を設定することも重要な役割である。
施設整備や景観整備と共に良好な人間関係が形成されたとき、本当に事業が成功したといえよう。再開発は極論すると「ひとづくり」である。
近藤 光良((株)アール・アイ・エー名古屋支社)/2002.9