総合計画策定プロセスにおける市民参加の試み/愛知県津島市 

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市民参加/総合計画まちづくり団体


 行政が主導する市民参加の試みは各地で行われていますが、市民の自主的な取り組みにまでつながることは少ないようです。愛知県津島市における、総合計画策定プロセスにおける市民参加の取り組みは、市民の自主的な活動の追い風となった事例であり、ここにご紹介したいと思います。

津島市

 愛知県津島市は、名古屋市を少し西に行ったところにある人口6万強の地方都市です。津島神社の門前町として室町時代より栄え、昭和初期には一宮市、尾西市とともに毛織物産業の中心地でした。しかし、毛織物産業が下火となるにつれて次第に町の勢いはなくなり、近年は名古屋市のベッドタウンとしての性格を強めています。

第3次総合計画の策定

 今回、「第3次総合計画」の策定時期を迎え、弊社がコンサルタントとしてお手伝いすることになりました。策定のプロセスを市民に開かれたものとするために開催されたのが、「新世紀デザイン市民会議」と「新世紀デザインチーム」です。

市民会議の様子 市民会議とデザインチームの交流会

「新世紀デザイン市民会議」の開催

 「新世紀デザイン市民会議」は、市政に対する市民の率直な意見を述べてもらうためにつくられた会議で、17人が会員となりました。会議は1999年10月から、翌年4月まで計18回開催され、その間、講師を招いて話を聞いたり、大垣市など新しい試みを行っている地域を見学したり、やはり「市民会議」を作っている日進市と交流したりしながら議論を重ねました。そして市長に対し、「歴史を生かしたまちづくり」と「市民主体のまちづくり」を提言しました。

若手職員による「新世紀デザインチーム」

 もうひとつの「新世紀デザインチーム」は、役所内の若手職員の声を総合計画に反映させるためにつくられました。30代以下の職員13名が構成し、今後、市でどんなプロジェクトを重点的に進めていったらよいのかについてアイデアを出しました。現地調査や、参考になりそうな取り組みを行っている地域の見学をしながらまとめたのが2つのアイデアです。
 1つ目は、西部の旧市街地と東部の新市街地の住民が共に利用できる新しい公園を整備すること、2つ目は歴史資源を活用した中心市街地整備です。

市民がつくった「天王文化塾」

 今回の取り組みの中で最も意義深かったのは、参加した市民や若手職員の「まちづくり」に対する意識がそれ以前に比べてずっと高まったことです。市民会議の開催期間中、「天王文化塾」という市民のまちづくり団体が発足しました。コアメンバーは市民会議にも参加しており、市民会議の終了後は、天王文化塾が実質的な実動部隊として活動を開始しています。天王文化塾は市民会議以前から構想されていましたが、市民会議の開催により新たなネットワークも生まれ、その活動がよりパワフルになりました。
 市民の主体的な活動を育てていくことは行政にとっては非常に大変なことですが、そのきっかけづくりのために、今後も試行錯誤していく必要がありそうです。

市民会議が市長に提言 見学した天白プレーパークで、落葉で遊んでみる若手職員

伊藤彩子((株)都市研究所スペーシア)/2001.2


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