住民参加というよりも、住民先導のまちづくり/千葉県松戸市 

<キーワード>
 権利者先導住民参加型のまちづくり/まちづくりコンクール/まちづくりシンポジウム


1. 住民参加のまちづくり

 住民参加型のまちづくりが全国各地で進んでいますが、平成8年度から住民参加というよりも権利者先導住民参加型のまちづくりの現場に立ち会うことができましたので、ここで紹介させて頂きます。整備を進めようとする任意組織が、市役所や教育委員会、地域の住民や芸術家まで含めて、まちづくりの途にこれから踏み込むというステージでの活動です。場所は少し離れますが、千葉県は松戸市の中心松戸駅からやや外れに位置する新京成電鉄みのり台駅という所になります。

2. 松戸市および稔台のプロフィール

 松戸市は、東京都心から約20km、電車で約30分(常磐線)の距離にあり、首都圏の住宅都市として発展を続けており、45万人以上の人口を要し、また年々人口は増加している都市です。一般的には「矢切の渡し」、「あじさい寺」、「21世紀梨」などで有名ですが、開発にたずさわっている人にすれば「マツモトキヨシ」や「すぐやる課」といった方が分かりやすいかもしれません。私は最近知ったのですが、「すぐやる課の女性チーム」が96年にスタートしているようですね。
 市内をJR常磐線、JR武蔵野線、新京成電鉄、東武鉄道、総武流山電鉄、北総開発鉄道の6本の鉄道が走り、市のほぼ中心部を国道6号が縦断し、都心と常磐・東北方面を結ぶ主要幹線道路となっています。
 みのり台駅は、松戸駅から東に新京成線で3つめになり、武蔵野線八柱駅側からは1つめの駅です。昭和40年代から住宅地として市街地が形成されていったという場所であり、都市計画的にも近隣商業地域200%容積という、商業拠点としてよりも地域生活拠点としての位置です。なお、地形的には、松戸市のヘソといっても良い場所になります。

3. 稔台の整備に向けて

 みのり台駅前の整備に向けた組織の名は「稔台駅前街づくり研究会」と言い、平成2年初春に組織され、その目的を「稔台駅前周辺の住居及び商業環境の整備を促進し、土地の合理的有効利用の方法を研究することを以って目的とする。」としております。私が関われたのが平成8年度に「地区再生計画」が実施された時からで、それまでは駅前再開発(共同化)の仕組や事業の成立性などを主に研究していたと聞いています。
 私が関わった平成8年には、「駅前の開発をする以上、駅を利用する人々や周辺の居住者にとって誇れるものであるべきであり、そのための整備をすることは駅前に権利を有するものの責任である」というニュアンスの考えを持っておられたようで、地域の人々の声を聞くためにはどのようなことをするべきなのか、を模索しているようでした。
 あわせて、市役所の関係者もなかなかのメンバーが集まっており、いわゆる「名物ホニャララ」が集まったような方々で、研究会の意志をより発展させて現実のものとするためには労力を惜しまない人達で、楽しみながら関わっていたみたいです。

4. 住民先導型のまちづくり

 平成8年からの主な活動です。なお、(1)と(2)には関われましたが、(3)以降は関わっておりませんので、活動経緯として記しておきます。

(1) 稔台まちづくりコンクール(平成8年度)

 「ともにつくろう私たちの未来 夢のまちが見えてくる」を合い言葉に、松戸市の居住者だけではなく、少しでも関わりをもっている(例えばみのり台駅を通過するだけの)人も対象に、稔台の未来についてコンクールを実施しました。
内容はチラシ(車内公告)の通り3部門で、それぞれ「作文の部=37」・「絵画の部=297」・「開発構想の部=10」の合計344という非常に多くの応募がありました。後援として教育委員会が参加していることから小学生の応募が多かったこともありますが、新京成電鉄さんの協力により、電車内公告を出してもらうなど、多面的支援があったことも付け加えておきます。
また、審査もこれまで関わりのあった学識経験者が快く引き受けてくれ、暖かみがあり、かつ厳正な審査をして頂いたことも成功の大きな要因です。審査も表彰式も大きなコンクールに引けを取らないほどきちんと行われました。受賞者の晴れ晴れとした顔が物語っています。
このコンクールの成功により、市民の稔台の街づくりに対する関心が高まり、また、研究会の活動に勇気を与えるものとなりました。民意を集約した街づくりを進めるための基礎ができました。

応募者の説明を聞く審査員 車内公告

公開審査の模様 表彰式

受賞者 懇親会
(2) 稔台まちづくりシンポジウム(平成9年度)

 コンクールの報告と共に、地区再生計画調査の報告を行い、「将来像」や「らしさ」をテーマに意見交換会(公開討論会)を行ったものです。「あなたも参加できる井戸端会議。是非…」が合い言葉です。44名の方が集まり、非常に活発な意見が交わされ、「電線地中化」「ふれあい」など注目すべき42個のキーワードが抽出される成果となりました。内容は新聞(地域版)でも取り上げられ、市民の関心もより一層高揚したものと思います。
 不特定多数を対象としたコンクールに対し、地域の自治会や商業者が多く参加し、自らの地域づくりの意識が高まりました。

(3) みのり台駅周辺地区「地域づくりの考え方の提案」パンフレット(平成10年度)

・ 提案1:地域づくり
・ 提案2:地域づくりの主人公
・ 提案3:地域づくりの考え方
・ 提案4:地域の将来像(例)
・ 提案5:継続的に活動できる組織づくり

この5つを提案し、地域全体での街づくりの重要性や継続の必要性を共通理解とするための活動を展開されていたようです。



































(4) 稔台松戸新田地域づくりフォーラム(平成11年度)

・ コンクールとシンポジウムの成果を基に集大成としての報告の機会
・ パンフレットの提案を基にした各個人の役割分担を考える動機付け
・ 身近なところからの取り組みへの動機付け
・ 活動展開のための人材発掘

以上を趣旨として実施したようです。なかでも、「できそうなこと探し」という内容が面白いですね。

(5) 稔台駅南口地区リフレッシュ計画案立案(平成12年度)

 これまでの活動の集大成として、駅南口の計画案が立案され、実現に向けて着実に動き出しているようです。

5. おわりに

 私の関わった2年間の中で、一度駅前再開発事業の事業費見込みを出したことがあります。普通はこの費用をスタートとして開発を考えていきたいとする権利者が多いと思いますが、それよりも「市民の望むものを作れば、自ずと事業は成功する」という考えをお持ちの方々でした(と、感じさせてくれる雰囲気でした)。良い出会いです。

杉浦(タカハ都市科学研究所)/2001.2

▲トップページに戻る▲