市街地再開発事業によるまちづくり/愛知県小牧市(小牧三丁目地区)
<キーワード>
再開発、個人施行、地元権利者
○ まちづくりの経緯
小牧市の中心市街地では、街路整備や商業近代化が遅れ、いわゆる中心市街地の衰退が問題となりました。そこで市は、中心市街地の賑わいと、都市機能の更新を図るため、自ら施行者となって市街地再開発事業を実施し、平成7年に商業と公共公益の複合拠点施設「ラピオ」を完成させました。再開発ビルの誕生で街はよみがえりつつあります。このような中、再開発ビル近隣においても、まちづくりの気運が高まり、活力ある市街地の形成を目標にした地区計画が定められました。そして現在は、その一画で地元権利者の皆さんが中心となって、新たな再開発事業が推進されています。
○ 地区計画
地区計画とは、地区の特性に応じて道路などの施設と、建物の用途や形態を定める計画です。当地区の地区計画では、「オープンスペースを確保して安全で快適な歩行者空間を形成すること」や「沿道に店舗を配置して地区周辺の商業施設との調和を図ること」などが定められています。
また、地区施設として、道路の拡幅と地区を横断する新設道路が定められています。地区計画で定められた内容は、新しく建物を建設したり、建替を行ったときに実行されていくことになります。
○ 愛知県初の個人施行
市街地再開発事業とは、防災や生活環境上問題のある市街地において、敷地を統合し、共同建築物に建て替えて、あわせて広場、街路などを確保して、快適で安全な都市環境を再生する事業です。
この事業は地方公共団体ばかりでなく、民間でも施行者となって実施することができます。また、民間で施行する場合には、市街地再開発組合という特別の法人をつくって行う場合と、個人の資格で行う場合の2通りが考えられます。前者は組合施行、後者は個人施行と呼ばれていますが、紹介の地区は後者の個人施行の事業です。愛知県においては、この事例が初めての個人施行事業となります。
具体的には、地区内に土地と建物をお持ちだった権利者7名が施行者になっています。これら権利者の方々が市やコンサルタントと力を合わせて、事業を構築し推進してきました。この取り組みは、権利者全員が汗をかいて、多方面からの支援を集めながら、計画から事後の管理運営まで組み立てるという、まさに住民主体のまちづくりです。
○ 中心市街地活性化を目指して
当地区の市街地再開発事業では、1階が店舗、上層階が住宅で構成されるビルが2棟建設されます。それにあわせて、先述の地区計画に定められている道路も整備されます。現在は工事中ですが、平成14年の2月には、新しいお店が並び、歩道が整備された商店街に生まれ変わる予定です。同時に、事業が完了すれば、分譲住宅、賃貸住宅あわせて72戸の住宅が供給され、中心市街地に生活者を呼び戻すことになります。本事業は、これら商店街の更新と、生活者の呼び戻しによって、中心市街地活性化の原動力になることが期待されています。市も、これに関連して道路整備やポケットパークの整備を予定しており、官民の協力によって街が楽しく、美しく生まれ変わろうとしています。
現在、地元権利者の皆さんは、再開発ビルの店舗テナント募集活動を自ら展開中です。このように自分たちが主体となる運動を積み重ねていくことで、まちづくりは進められています。いよいよ、来年にはこれまでの取り組みが実を結びます。先日、権利者の皆さんは建設中の再開発ビルに思いを込めて「ルミナスツインズ小牧」という名前をつけました(ルミナスとは光り輝くという意味です)。
中心市街地で新たな光が発せられる日はもう間近です。
松井宏充((株)アール・アイ・エー名古屋支社)