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共同化/敷地の整形化/地区再開発事業
まちを再開発する場合、建物の「共同化」と言う言葉がよく出てきます。この共同化とはどういうことを言うのでしょうか。
建物の「共同化」とは、複数の権利者が建物を一体的に整備・利用することをいいますが、この方法にはいろいろなタイプがあります。例えば、(T)のようにAさん、Bさんと言う権利者がいたとします。
お互いの土地の有効利用を考え一緒に建物を建て替える場合、その方法として(U)の様に一見ひとつの建物のように壁を共有してそれぞれの敷地に建て替える場合、(V)のように二人が建物を一緒に利用する場合があり、さらには、敷地も共有することも考えられます。
各地で施行された市街地再開発事業は、土地、建物とも権利者で共有するケースがほとんどです。
中心市街地においては、間口の狭い敷地が隣り合っているケースが多いのですが、個々で建て替えていると、敷地形状のため有効利用が難しく、街並みとしても統一性のないまちになってしまいます。
権利者の方が共同で建物を建て替えることにより、道路を拡幅し広場や歩道などを設置したり、集客性の高い大型店舗や公益施設を誘致することが可能となり、安全・快適で、利便性が高く、活気のあるまちが形成できることになります。
少し抽象的な話になりましたので、具体例で説明いたします。
次に挙げる例は、名古屋市港区入船(地下鉄名古屋港の近く)の共同化事例です。
名古屋市では、江川線という名古屋港から都心に向かう幹線道路を拡幅するとともに沿線の街並整備に取り組みました。道路拡幅に伴い、道路取得費が権利者に支払われます。この資金をもとに、各個で個別に建て替えるのでなく、共同で建て替え名古屋市における玄関口のひとつとしてまちづくりをしようと、名古屋市が支援を行いました。
この例は4人の権利者が共同化を行ったものです。土地の大きさや形状もまちまちの地区でしたが、比較的仲のよい権利者達でした。
市がコンサルタント派遣の費用を補助し、Kさんを中心に約3年間まちづくりや共同化について検討会を開き、全員の合意の上で共同化に取り組みました。
建て替え前 建て替え後
4人の土地形状は少し複雑な形状をしていましたが、これを契機に敷地の形状を整形化することができ、一部では、駐車場への通路を共同利用することで合意し、狭い敷地を有効に利用することができました。
検討会の過程で、全体共有案も検討しましたが、権利は別々にしておきたいということから土地形状はそのままで、それぞれ自分の土地の上に、壁を共有し建物を建てました。4人の権利者がお互いに壁を共有しながら、外壁の仕上げや色彩の統一、屋根を設けるなど街並形成に共同化している例で、地中海の村落などにみられる建物形態とよく似ていませんか。
イタリア・オストゥーニ市⇒
この事業は共同化する地区を地区再開発事業区域として定め、道路拡幅による土地処分費をもとに、調査計画費、土地整備費の補助金、さらに緊急促進事業としての補助金を合わせて受けています。
また、建設費についても、開発銀行(現政策投資銀行)から工事費の40%を低利融資を受けています。
この地区再開発事業を活用した事例は隣接して2カ所あります。
(V)のケースで、さらに土地そのものも共有化した例は本シリーズ「再開発とはどのようなことでしょうか」にも実例を紹介いたしましたので、ここでは省略いたします。
近藤光良((株)アール・アイ・エー名古屋支社)/2000.6