城下町地区における住民参加型まちづくり/愛知県犬山市 

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 住民参加/まちづくりウォッチング


1.城下町地区とは?

 国宝犬山城の内掘(城郭)と外堀により構成されている城下町地区は、町割をはじめ文化的に価値の高い建物や木戸跡などの史跡が今もなお数多く残っているとともに、毎年多くの観光客で賑わう犬山祭の際には勇壮な車山が町内を曳きまわされるなど、歴史や文化を象徴する地区として市内外の方々に親しまれ現在に至っています。


2.地区の現状と住民参加型まちづくり

城下町地区では人口減少や高齢化の進展によるまちの空洞化や、観光客の減少等によりかつての賑わいが薄れつつあるとともに、火災や地震などの災害への対応が懸念されるなど様々な問題を抱えており、住民もそれらに対し大きな関心を持っていました。
 こうした中、犬山市では地区の財産である歴史的資産を活かした21世紀にふさわしいまちづくりを、住民の方々とともに考え、ともに進めていくために、様々な住民参加の場と機会を設けています。
 ここでは、この住民参加型まちづくり組織の一つであり、主に犬山城周辺のまちづくりを考える「城前・丸の内まちづくり検討会」の取り組みを紹介します。


3.「城前・丸の内まちづくり検討会」とは?

この会は、「今の城前は何が問題なのか?」、「どのようなまちづくりが必要か?」といった意見を出し合いながら、今後のまちづくり計画に対し、すぐできる具体的な提案を行うことを目的としています。
 検討会には、城前地区に住んでいる方々、商業などを営んでいらっしゃる方々など計19人が参加しています。なお、市にはオブザーバーとして出席していただき、我々コンサルタントは会の運営支援を行いました。



4.検討会の活動

 検討会は平成11年11月から平成12年3月の間に合計9回開催し、全般的な地区の問題や課題のほか、「歴史・文化」「観光」についての積極的な意見交換を行い、最終的に「まちづくりのテーマ」をはじめ、「まちづくりの目標」「ゾーン別まちづくり構想」をとりまとめました。
 なお、検討にあたっては、住民皆さんの足並みがそろったまちづくりの展開を目指し、中学生以上の全住民を対象としたアンケート調査(回収率93%)を実施したのをはじめ、検討会終了後に毎回「かわら版」を発行するなど、検討会メンバー以外の方々の意見集約も積極的に実施しました。また、実際の目でまちの問題や課題を把握する「まちづくりウォッチング」を開催するなど、提案内容が「絵に描いた餅」ではなく現実的なものとなるよう努めました。

5.まちづくりに対する提案

 上記の取り組みの結果とりまとめられた「まちづくりのテーマ」と「5つの目標」を紹介します。
▼まちづくりのテーマ
−だれもが歴史や季節をゆっくり楽しめるまちづくり−

▼5つの目標
  ○生活しやすく安全で快適に住みつづけられるまち
   ・ 城前の通過交通の排除
   ・ 歩行者空間の整備
   ・ 空き家等のポケットパーク整備など
  ○歴史の面影を伝える風格あるまち
   ・ 福祉会館付近での「大手門」の復元
   ・ お城の入口部に城門の設置など
  ○歴史を学びながら楽しく散策できるまち
   ・ 歴史を感じる散策路の整備案内板の設置
   ・ 桜ともみじの並木づくり
  ○訪れる人々が楽しく過せるまち
   ・ 観光客用駐車場の確保
   ・ 空き家の活用による街角ギャラリーなど
  ○私たちがもてなすまち
   ・ 清掃運動、緑化運動、声かけ運動、あいさつ運動の実施
   ・ 「まち飾り」運動などの実施

6.提案の実現化に向けて

 検討会の最後の活動として、住民の方々への提案内容の発表とそれに対する意見交換を行うため「城前・丸の内まちづくりフォーラム」(参加者40名)を開催しました。参加者からは、「まちづくりの提案をより良いものにしよう!」、「一つずつ実現に向けて進めていこう!」など積極的な意見が多数出されるなど、住民による住民のためのまちづくりが着実に進んでいることが実感できる会となりました。
 今後は、他のまちづくり計画との整合を図りながら、提案内容をもとに実現に向けての更なる一歩を歩んでいきたいと考えています。
 また、近日中に犬山市の「(仮称)まちづくりホームページ」が開設される予定です。そこにはここで紹介した「城前・丸の内まちづくり検討会」をはじめ、住民の方々によるまちづくり・道づくりに関する様々な取り組みが紹介されるとともに、皆さんのアイデアなどを幅広く募集する予定となっています。今後も犬山市のまちづくりに注目してみてください!

 (鶴田/ランドブレイン株式会社名古屋事務所)/2000.5

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