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地域通貨/エコマネー/LETS
いま、全国の元気な街で地域通貨の取り組みが盛んに始まっています。今回は、地域の人と人、人と自然をつなぎ、地場経済の活性化にも貢献するといわれるこの仕組みをご紹介します。
国家が発行する現行通貨を補完する、地域限定で発行・流通される利子のつかない通貨のことです。利子を排除して物やサービスを地域内で交換する仕組みをつくり、地域全体を持続可能な社会に転換してゆこうとするものです。「暖かい通貨」、「エコマネー」とも呼ばれています。
隣人の相互支え合いを目的とした比較的小規模なグループ向きの仕組みで、LETS(Local Exchange Trading System)と呼ばれています。会員の各々が通帳を持ち、お互いにサービスのやりとり(例えばお年寄りのお世話、子守、送迎サービスなど)を記入してゆきます。
会員のみに限定した顔の見える範囲での交換システムで、利子はつきません。差し引きがマイナスの人は、貧乏人としてではなく、地域の中で支援を必要としている人と認識されます。
運営委員会が独自の紙幣を発行して、より実際の通貨システムに近いかたちで運用するかたちです。商店街などを巻き込むことで会員外へも利用の拡がりが見込めるため、地域経済の活性化にも結びつく可能性があります。運用範囲の拡大が望める一方、お互いの顔が見えにくくなることでトラブルなどのリスクも高くなります。
日本で地域通貨が大きく話題となった背景に、「エンデの遺言」という一冊の本があります。著者のミヒャエル・エンデは「モモ」ヤ「ネバーエンディングストーリー」でよく知られる童話作家です。彼はその晩年において、持続可能な社会と経済システムについての重要なメッセージを私たちに残しました。
物とは違ってお金だけが劣化せずに利子を生み続けるという、現行の金融システムがこのまま続けば、富裕層と貧困層への二極分化・地域社会の崩壊・自然破壊がますます進み、近い将来に世界経済そのものが破綻してしまうというものです。
利子を生まない貨幣システムによる、競争社会から共生社会への転換。これができなければ持続可能な未来は拓けないと、お金に支配された現代社会に警鐘を鳴らしています。
海外の例では、イサカアワー(米国---紙幣流通型)、交換リング(ドイツ---通帳記入型)などが有名です。金融機関が運営するヴィア銀行(スイス)のような事例もあります。
国内では、おうみ(滋賀県草津市)、クリン(北海道栗山町)、ピーナッツ(千葉市)、レッツチタ(知多市)など、続々と運用グループが立ち上がっています。
住まいとまちづくりのNPOとして中部地区で活動している、安住の会(あんきにくらすじゆうの会)でも、高齢化の進む高蔵寺ニュータウンを中心として「高蔵寺ふれあい通帳」の取り組みを始めました。
地域通貨のしくみは、初めての人にはなかなか判りづらいものです。そこで、ゲームを通して愉しくこの仕組みを学ぶプログラムが開発され普及しています。
おもちゃの紙幣を使って現行通貨の問題点を浮き彫りにするとともに、LETSによるサービスのやり取りを通して地域通貨の良さを体験してみる、という内容です。
まちづくりワークショップの一環として、あなたのまちでもゲームを企画してみませんか? 安住の会として情報提供やワークショップ支援もしますので、みなさんお気軽に声を掛けてください。
黒野雅好(安住の会、日本設計名古屋支社)/2000.12