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中心市街地活性化/商業活性化/空き店舗対策/天王文化塾
中心市街地の活性化は、全国の各都市で共通の課題となっており、それに対して様々な取り組みがなされています。中心市街地には古くから商業、業務などの様々な機能が集まり、人々の生活や交流の場となり、また長い歴史の中で独自の文化や伝統を育むなど、その街を代表する「顔」ともいうべき場所です。
しかし近年、多くの都市でモータリゼーションの進展への対応の遅れ、商業を取り巻く環境の変化、都心の人口の減少と高齢化などを背景に、中心市街地の衰退・空洞化という問題が深刻化しています。このような状況においては、商店街の活性化を商業振興の視点だけで捉えることはできず、商業者のみならず地域の住民と一緒になって、まちづくりとして取り組んでいくことが必要です。
そうした中、愛知県の津島商工会議所では、商業者のみならず地域の住民などを交えて会合を重ね、我々コンサルタントも一緒になって「中小商業活性化ビジョン」をつくりました。そして、商業者や住民の手作りによるシンポジウムを開催し、その内容を広く一般の方々にPRしました。その結果、そのビジョンの中で提案された主要事業が今、一つずつ実を結ぼうとしています。
その一つは、旧街道沿いの空き店舗であった「カネ長」跡に「いっぷく茶房」がオープンしたことです。この店をオープンさせたのは、近くで商売をされている若手商業者二人で、ビジョンの趣旨に賛同し、まずは実験的な取り組みをということで始められたものです。
そしてもう一つは、市民の有志や学識経験者も含めて30名程度のメンバーで「天王文化塾」を立ち上げ、津島の文化や情報発信の拠点にしていこうとしています。この天王文化塾の毎月の集まりを先のいっぷく茶房で開催することで、若手商業者の実験的取り組みを支援していこうという協力体制も生まれています。
このように、津島のまちづくりは一つずつ動き出していますが、その背景には、街を愛し絶えず行動するリーダーの存在、そしてそれを事務局として支える商工会議所のバックアップ体制などがあるからだと思います。そして、このような民間サイドからの盛り上がりに呼応し、市でも中心市街地活性化法に基づく基本計画策定に乗り出しました。商業者、住民、行政が一体となったまちづくりへの取り組みを期待したいものです。
大塚俊幸((社)地域問題研究所/1999.11