再開発とはどのようなことでしょうか /愛知県知立市 

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 再開発事業/共同化/権利変換/まちづくり会社都市計画決定

知立市の商店街がきれいになった

東海道五十三次「池鯉鮒」 平成10年に知立市中町銀座通りが新しくなりました。銀座通りは旧東海道沿いの宿場町として発達しました。安藤広重の「東海道五十三次」の中に、「池鯉鮒」という地名で、宿場や馬市の風景がでてきます。
 この由緒ある中町銀座に、ホテル、音楽ホール(300席)、店舗、住宅、駐車場の複合ビル「リリオ」が完成し、道路も快適な歩道が整備され、車の通行も便利になりました。
 今までは夜になると明かりもまばらでしたが、ホテルと住宅ができたために明るい街並みが復活しました。ホテルで宿泊、食事、宴会等をしたり、コンサートを聴きに来る人たちで、人の流れも増えました。

 なぜこのような街づくりが可能になったのでしょうか。
 この商店街でしたので道路幅員が狭く、車が通ると歩行者が安心して通れないような通りでした。また、木造建築が密集しており、火災や地震に対して対応が迫られた地区でした。
 商店街としても、最近郊外部に出店した大型ショッピンセンターや広い駐車場を用意したロードサイドショップが多くなり、銀座通りは商店街として衰退しつつある状況でした。
 このような商業環境の悪化に対し、地元商店街の人たちが何とかしなければ大変だと、市に相談をし、再開発事業に取り組むことになりました。 

再開発への準備

再開発前 地元権利者のリーダーが市に協力依頼をし、地元の権利者、コンサルタント、行政で再開発の仕組みや手続きなど勉強会を重ねました。例えば、再開発には行政が取り組む「公共団体施行」、都市基盤整備公団(旧住宅公団)の取り組む「公団施行」、そして知立のように地元の人たちによって取り組まれた「組合施行」があります。 さらに、再開発に必ずでてくる「共同化」「権利変換」とはどういうことなのかを、学びました。 

 銀座通りの権利者達は再開発に取り組むために権利者達は多少の意見の食い違いはありましたが、再開発による銀座通りの活気復活をめざし、昭和63年度、組合施行による市街地再開発事業を選択し、再開発準備組合を結成しました。

  準備組合では、どのようなまちにするか、権利者個々の将来設計など、まちづくりを行うために何度も勉強会を開催し、再開発事業の理解を深め、取り組み方法や役割等も決めました。施設の内容も現地に残る権利者全員の権利を共同化し、ホテルやホールを導入することで合意に至りました。(仕組み等の詳細説明は後日掲載します。)

 この段階で最大の課題は、集客施設としての店舗やホテルを誘致したいが、テナントになってくれる企業があるかどうかでした。幸い、地元企業、市などの大きな支援があり、ホテル誘致が可能になってきました。しかし、ホール、駐車場、店舗等の建物を取得する組織が必要になります。この組織として、行政、企業、権利者、銀行の出資による「知立まちづくり会社」を設立することを決めました。いろいろな努力の結果、住宅やホテルを取得する企業も目途がつき、再開発事業の全体像が具体的になってきました。

準備組合から組合へ

再開発後 平成6年には、都市計画決定を経て、法人格のある再開発組合が結成(平成7年)できることになり、再開発のための融資や補助金を受けることができました。
 再開発組合では、権利者への補償、建築設計及び工事費、個々の権利等について詳細に検討します。テナントとの家賃交渉、管理運営体制など具体的に検討し、調整をします。補償、権利についての意見の違い等があり、調整に時間を要するときでもあります。

工事着工及び完成

 さて、いよいよ工事の着工です。権利者の皆さんや施設の取得者との調整もほぼ終わり、自分たちの夢が徐々に実現するのを楽しみに、忙しい日々が続きます。
 平成10年3月に、待ちに待った再開発ビルが完成し、立派なホテル、ホール、住宅等が姿を現しました。周囲の道路もきれいになり、銀座通りは歩いて楽しいまちになりつつあります。ホールでは、有名人のコンサートなどが開催され、演奏会の後ホテルで食事をするなど、地元や周辺地域の人たちにとって、心にゆとりの持てる生活を体験することが可能になりました。この再開発ビルを核にして、銀座通りの人たちは、これから商店街の活性化を目指し活躍を続けています。

再開発事業とコンサルタント

リリオホール 再開発について、知立市の事例を取り上げ簡単に説明しましたが、再開発の最大のメリットは、手続きや内容は複雑ですが、土地・建物の共同化により、一人ではできない「まちの活性化」という大事業が実現できる点です。
 再開発事業にはここで述べた以外に、いろいろな方法があり、手続きもそれぞれ違います。また、資金計画、権利調整、事業費の検討、補助金の確保など複雑な課題があります。このような複雑な項目を整理し、行政と協議しながら権利者の立場に立って意向調整をし、権利者の夢を実現するための裏方をつとめることが私たちコンサルタントの役割です。

近藤 光良((株)アール・アイ・エー名古屋支社)/1999.11
                               E-mail m-kondo@ria.co.jp 

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