◇ 記念講演
「まちづくり協議会とまちづくり支援ネットワーク」
  〜震災復興からの参加型まちづくり〜

  小林 郁雄 氏(株式会社コー・プラン 代表) 
 

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  • 神戸山手大学環境文化学科(環境デザインコース) 教授

  • 人と防災未来センター 上級研究員

  • 阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク 世話人


<講演>

○まちづくりの定義

  • 最近、「まちづくり」という言葉があふれているが、定義が確立していない。
  • 都市計画の3つの性格を整理すると、
    1. まちづくり=地域における、市民による、自律的継続的な、環境改善活動
    2. 法定都市計画=国家による、行政による、統一的連続的な、環境形成制度
    3. 都市総合計画=全国総合開発計画・県市町総合基本計画などの目標
  • そして、1のまちづくりと2の法定都市計画をつなぐものとして地区計画があり、
      同様に、2と3の間には都市計画マスタープラン、
      3と1の間にはまちづくり基本条例が存在する。

○まちづくり協議会システム

  • 神戸市が住民組織をまちづくり協議会として認定すると、まちづくり構想の提案権を持ち、
    合意すればまちづくり協定が結ばれるという、「まちづくり条例」が1981年制定。
  • 震災前には12しかなかったまちづくり協議会が、震災後には100を超え、復興まちづくりの活動を行った。
  • 野田北部まちづくり協議会
    • 大正時代より村民の自律した活動があり、コミュニティによって作られた大国公園があるなど、住民に連帯感が成立していた。復興まちづくりは、「人に始まり、人に終わる」ということが理解できた。
  • 灘中央区まちづくり協議会
    • 重点復興地域に指定されなかったいわゆる白地地区であり地域の人々が主体的に、まちの点検隊、採点隊、素描隊、整備隊など順次復興まちづくり活動を行ってきた。
    • まちづくりスポット創生事業による「なかよしランド」をつくる際は、地域の人々が自分たちでWSを開催し、自分たちで考え、つくり、管理した。

○まちづくり支援ネットワーク

  • 「阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク」は震災後10日にできたネットワークで、
    市民まちづくりの支援のための「ゆるやかなつながり」である。
  • 5つの定常活動
    1. ネットワーク連絡会議の開催
    2. ネットワークニュース「きんもくせい」の発行    
    3. 「復興市民まちづくり」(各まちづくり協議会ニュースなどの収録合本)の編集・刊行    
    4. 阪神・淡路ルネッサンス・ファンド(HAR基金)の現地事務局 
    5. すまい・まちづくり人材センターの相談協力
  • 3つのプロジェクト活動
    1. 被害実態緊急調査
    2. 市街地緑化再生プロジェクト
    3. コレクティブハウジング事業推進応援団

○震災ユートピア

  • 震災後3ヶ月間を、被災市民は「震災ユートピア」と呼ぶ。
  • 多くの不自由や困難の中にいるが、金銭的な意識が無く自由で相互扶助からなる自律連帯市民社会があった。
  • 震災ユートピア期に被災現場で学んだ3つの呪文
    • 巨大なものはもろい
    • やってないことはできない
    • 自分でできることを自分でする

○市民まちづくり

  • 21世紀には、「自律と連帯」を合言葉とする市民活動の総体である「市民まちづくり」が展開される。
  • その活動の鍵を握るのが「まちづくり協議会」である。協議会は組織である必要は無い。
  • 市民まちづくりにおける倫理的論理的な社会基盤は合計形成である。協議会では、決定の際に拍手を用いるなど、意見の違いによる人間関係の悪化に配慮している。

○愛知まちコンに対して

  • しっかりとした組織が形成されていることは素晴らしい。震災では、半年で仮設住宅ができ、地区内住民が外に出て行ってしまうため、半年が勝負。住民側も支援をするわれわれも組織づくりを事前に行うことが大事。
  • 支援ネットワークは個人中心であるのに対して、愛知まちコンは法人が多いように感じられる。会社として震災ボランティアがどこまで認められるかが不安。
  • 地元や学会、役所などへのネットワークの深さや、個人的な付き合いが必要。

<意見交換>

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○質問1

  • 企業としてのコンサルタントが市民主体のまちづくりにどう関われるのか?合意形成に至るまでの費用や時間が多く必要だと思われるが、コンサルタントのボランティアで成り立っているのでは?企業としてまちづくり活動に参加することはできるのだろうか?
○小林氏
  • コンサルタントが関わるかどうかに関わらず、壊れてしまったものを復興させなければならないのは明白。
  • 個人ベースの会社が楽しみでやるか、退職者による活動が多い。経済ベースで動けないことには問題があると思う。

○質問2

  • 支援ネットワークにはどのようなコンサルタントが関わられたのか?
○小林氏
  • 大手のゼネコン設計、大学教授、少人数の事務所。
  • 組織としてよりも個人として動くことが多いが、組織をあげて参加される場合もあり、その場合は企業側の承諾が得られたのだと思う。


○質問3

  • まちづくり協議会の構成や集め方について
○小林氏
  • 神戸市のまちづくり条例による設立条件は、地区内住民の大多数の人が賛成すればよい。
  • 地区内の権利関係などを考慮した上で、総意を反映するシステムは難しく、構成メンバーを決めることはできない。
  • 震災時のまちづくり協議会に決定権が存在すると思われがちだが、実質的には提案権しかない。まちづくり条例は紳士協定であり、区画整理の仮換地についても個人の権利で行う。
  • 道路や公園の位置について決定することはできても個人の権利に関することはできない。
  • WSの仕組みと同じで、決定はできないが、決定するための作業は協議会でしかできない。
  • 協議会の構成は地区によって様々で、防犯PTA自治会など地域に関わるすべての団体が関わっている地区や、商店街中心の地区もあれば、個人ベースで集まっている地区もある。

○質問4

  • 提案権について。ある協議会で議論したこと市に提案する場合、協議会の総会で賛成多数というセレモニーをするのか?
  • 投票はしないと言われたが、行政側は同意率については問わないのか?
○小林氏
  • 同意率については、まちづくりニュースなどで周知徹底しているかどうかが問われる。
  • 地域性にもよるが、拍手で決定するのが一番合理的だと思う。不満や文句が出なければ良い。拍手が少ないと思えばもう一度議論すればよい。
  • 総会については、設立要件がない。母数が決定しずらい。
  • 総会の設立要件で一番多いのは、役員の倍程度の参加者がいることである。

(記録:山崎 崇/(株)都市研究所スペーシア)


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