2003年度4月交流会
風情あるまち「美濃市」を訪ねて
美濃市「目の字地区」視察交流会
【日時】 2004年4月16日(金) 8:30〜17:30
【場所】 岐阜県美濃市(目の字地区、美濃和紙の里会館)
【参加者】 13名
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■行 程
8:45 名古屋駅太閤通り口 発
9:45 目の字地区 着
10:00 美濃市職員を交えた座談会(〜11:00、自由散策)
12:00 昼食(昼食後自由散策)
14:00 目の字地区 発
14:30 美濃和紙の里会館 着
15:30 美濃和紙の里会館 発
16:00 美濃橋 着(上有知川湊灯台見学)
16:30 美濃橋 発
17:30 名古屋駅太閤通口 着(解散)
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美濃市職員を交えた座談会の概要
●美濃市の伝建地区の概要
平成11年5月に中心市街地(目の字地区)の約9.3haが「美濃市美濃町伝統的建造物群保存地区」に選定される。
この保存地区は、1600年頃に金森長近が水害の多かった長良川沿いの城下町を現在の位置に移したことに始まり、目の字形の町割りと建物の屋根に備え付けられた「うだつ」が特徴的である。
伝建地区の選定にあたって、平成10年度から整備計画を策定し、道路の修景や電線類の地中化等を順次進めている。
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●座談会に参加して下さった美濃市の職員の方
都市整備課
社会教育課 |
課長補佐兼住宅係長
課長補佐兼都市計画係長
課長補佐兼街並み景観保全室長 |
古田義郎氏
古田行雄氏
堀部 勉氏 |
【目の字地区 街路整備事業について】(古田行雄氏より説明)
目の字地区の電線類の地中化は、ほぼ完了しており、サイン等の整備が残っている。
- 電線類の地中化に対して、当初、地元は積極的ではなかったが、一部の区間でモデル的に実施したところ、他の地区からも実施してほしいという要望が出てきた。
- 町並みに似合う街灯は、暗くて町に活気がなくなるという意見があり、「風情」と「商売」の優先性が問題になった。地区内7町内会の自治会長、景観保全委員で検討し、地元の理解を得た。新しい街灯は、個人の家にお願いをして付けさせてもらっている。
- ポケットパークは2箇所設置した。
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Q: |
「目の字」地区の呼び名は、昔からの呼び名なのか? |
A: |
いつ頃から「目の字」地区と呼び始めたかは不明だが、それほど古い時代からではないと思える。 |
Q: |
「目の字」の呼び名は、これからも使っていくのか?「目の字」という呼び名に対する地元からの反対はなかったか? |
A: |
実際は、「〜町」や「〜町通り」という呼び方をしている。全体的には、通常「うだつのあがる町並み」と呼んでいる。
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Q: |
トランスのボックスが見当たらないが、どこに設置しているのか? |
A: |
路地の引っ込んだ部分やポケットパークに設置している。それらがない場合は、目の字地区外の電柱に設置している。このため、目の字地区外に電柱が増えるということで苦情もあったが、今では地元の理解を得ている。
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Q: |
民家に街灯が付いている点が珍しいが、街灯の数は、今後増やせるのか? |
A: |
ほぼ設置が終わっているため、数を増やすことはない。
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Q: |
地元との合意形成が上手く行えたコツは? |
A: |
事業を始める前から、まちのあり方についてワークショップを開催しており、概要を理解してもらっていた。 |
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【美濃市の伝統的建造物群保全地区について】(堀部 勉氏より説明)
目の字の町割りは1600年に出来ており、町割りそのものも伝建地区の特徴となっている。
- 目の字地区は173世帯、600人が生活している。文化財を保護したり、これらを活用して観光面等を活性化することと、地区内の住民の生活環境を保護することを両立することが難しい。
- 目の字地区の中に、蔵も含めて建物は約650棟あり、そのうち約250棟が歴史的に価値のある建物である。さらにそのうちの115棟は、同意書をもらって伝建物となっている。平成11年度から、伝建物を39件、伝建物以外の建物(非伝建)を7件、保存事業で改修している。
- 鉄骨造等の非伝建の建物を町並みに合うように改修することが難しい。
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Q: |
ゴミの収集はどうしているのか? |
A: |
基本的には、他の地区と同じであるが、回収の時刻や集積場所については配慮されていると思う。
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Q: |
歴史的に価値のある建物に認定されるのに年代の区切りはあるのか? |
A: |
特にない。目の字地区の場合は江戸時代末期〜戦後に渡っている。 |
Q: |
伝建物の同意に反対する理由は? |
A: |
建て替えが出来ないからである。古い建物は、室内が暗く、湿気る、冬寒く夏暑い、駐車スペースがないという問題があり、生活しづらい。内装のリフォームは補助金が出ないが、市では内装のリフォーム例の提案をしている。
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Q: |
伝建地区の選定に際して、反対はあったのか? |
A: |
相当の反対があったと思う。建物を改修できないことが大きな原因であったが、現在は、観光客も多くなり、このようなまちに誇りを持つ住民も増え、住民の意識が変わってきている。
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Q: |
土間を改修して駐車スペースにしているケースはないのか? |
A: |
土間を改修して駐車スペースにしても問題ないが、伝建物は構造的な改修は出来ないため、難しい。ただし、建築的な技術によって可能と思う。
外観を守ることも大切だが、暮らしを守ることも重要視されているため、絶対ダメということはない。若干の間口の変更等は許容されると思う。
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Q: |
町並みを整備して観光面は発展しているか? |
A: |
観光客は増えている。市としては、個人客のリピーターを増やすことを目指している。
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Q: |
町並みの保存と暮らしやすい生活環境をつくることとの折り合いはどうしているのか? |
A: |
視察等の研修を行っていることもあって、町並みの保存に対する住民の意識が変わってきている。
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Q: |
伝建物の改修等にあたって、専門家はどのように関わっているのか? |
A: |
施主が設計事務所や地元の大工に依頼し、図面を市でチェックしている。伝建地区を有する58市町村のうち、1/3の市町村では建築のプロが担当しており、残りは事務職の職員が担当している。建築のプロ(技術職の職員)が担当した方が、協議等においてスムーズに進むと思う。
しかし、担当の技能や市町村の規模ではなく、関わる人の人間性によって、まちづくりに違いが出てくると思う。
専門家や大学の先生が計画を作っても、地元の了解を得ることが必要である。結局は、地元が納得するものが、いいモノと言える。
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視察の様子
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目の字地区
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案内ボランティアの方の説明を聞く
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美濃橋(国重文)
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川湊灯台
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視察の感想
- 伝建地区に対する住民サイドの意見も聞いてみたかった。
- 古い町並みが予想以上に残っていて感心した。現在のカタチになるまでの住民との合意形成についてもっと聞きたかった。
- 伝建物の維持をどうするかが問題と感じた。生活者が共生できる観光地のあり方を考える必要がある。
- 町の雰囲気が変われば、住民意識も変わるため、住民のまちに対する誇りも育てていく必要がある。
- 目の字地区内に、通過交通が多いので、対策が必要ではないか。
- 伝建地区内の生活者の問題はもっと論じられるべきである。
- 目の字地区内の店員さんが親切である。このまちが好きなんだなぁと思った。
- 以前に比べ、観光客向けの店が増え、まちが変わってきている。まちの変化を見ることができたので良かった。
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記録:黒田 清吾/中央コンサルタンツ株式会社
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