愛知住まい・まちづくりコンサルタント協議会 総会記念フォーラム
東京圏・名古屋圏・関西圏 三大都市圏の都市居住比較
−それぞれの都市居住ライフスタイルとまちづくり−
都市再生の1つの核として「都市居住」に注目が集まる一方で、そのライフスタイルの実像については、まだ、はっきりとした輪郭がみえていない。本フォーラムでは、東京圏、名古屋圏、関西圏の都市居住の先駆的モデル、代表的事例を通じて、どのようなライフスタイルが実現されようとしているのか、また課題は何であるかを比較検討することで、新たな都市居住のライフスタイルの実像に迫りたいと考えている。
東京、名古屋、関西の代表的な都心居住プロジェクトの実務担当者を一同に招き、その計画論、市場戦略、後日談等を話していただき、新世紀の都市居住のあり方を考える1つの機会にしたいと考えている。
会場で名古屋市内の中区・東区・千種区に住んでいる方は5名ほどしかいない。圧倒的に多くの人がおそらく郊外に住んでいることが伺える。60年代以降のニュータウン開発(多摩・千里・高蔵寺)もあり、多くの人が郊外に住むようになった。休日に自然を満喫するなど、郊外でのライフスタイルは比較的イメージしやすい。 |
○東京圏:山梨知彦 氏(日建設計・東京 設計室長)
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○名古屋圏:坂 勝雄 氏(都市基盤整備公団 中部支社) 事例)千種駅南再開発事業 |
○関西圏 江川直樹 氏(現代計画研究所大阪事務所 代表)
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○永柳 氏
【3大都市圏の都市居住のかたち】
・ 東京圏 :都市居住のマーケットが大きいため、大規模なものが成り立つ。超高層の住宅からの眺望の魅力。
・ 名古屋圏:生活のインフラが不足しているため、商業施設も含めた複合開発がよいのでは。マーケット的にはあまり大きくない。栄での可能性はある。
・ 関西圏 :コミュニティ・生活が残っている場所では、都市ストックを活用し、修復・調整によって都市居住を実現していく。生活の砦としての都市居住。街に溶け込んで住む。
○永柳 氏
都市居住の心配なことで犯罪が挙げられる。映画「パニックルーム」は、街中のタウンハウスに強盗が入るというものであった。日照も都市居住では期待できないし、期待してはいけないのではないか。これら都心居住のマイナス面をどう克服するのか。
○山梨 氏(東京圏)
都心居住では、教育や環境のまずさという話がある。教育の面では、都心部は塾も充実しており、学校もよいと言われており、一般のマーケットには悪くないと思われている。
犯罪は非常に大きい。東京の場合、いろいろなものが大規模で、大規模なマンションではエレベーターなどセキュリティに問題がある。100軒くらいが感覚的に顔が分かる限界ではないか。自分もエレベーターでストーカーに間違われた経験がある。
足下がエネルギッシュな東京では、住まいに「ほっとした瞬間」が求められ、その点で眺望が重視される傾向がある。日照はさほど問題にならない。
○坂 氏(名古屋圏)
中区では児童の数が減少しており、問題となっている。
犯罪という面では、複合ビルとして開発した場合、不特定多数の人が出入りするため、セキュリティが大きな問題となる。あまりセキュリティをしっかりさせると閉鎖的になってしまう。
名古屋では圧倒的に南向き志向。西向きが最も嫌われる。ただ、紹介した事例では、西向きであれば、栄・セントラルタワーへの眺望が得られる。
○江川 氏(関西圏)
プライバシーを保護しながら、人が住んでいる気配を如何に感じられるものにするか。一緒に住んでいる人が見えることは、セキュリティの面でも重要。
都市居住において自立的に全ての住戸が南向きで日照を得ることは難しいし、日照だけでない価値も再評価されるべき。特色ある生活環境の創出も都心居住の魅力。
【質問】
Q :都心居住が進むことによって、例えば保育所や小学校が逆に足りなくなってしまった。東京都では税金をかけて都心居住が進むことをとめることを考えているという話もある。本来、24時間人がいるといった点で都心居住はよいことだと思うが、生活利便施設が不足しているまま住宅をつくるだけでは暮らしやすい街はできないのではないか?
A(山梨 氏):指摘の通りの問題は確かに言われているが、これまではマーケットが高齢者、リタイア層、DINKSに偏っていたため、その問題が顕在化していない。ただ、現在建設中の都心マンションはファミリー層をターゲットとしているため、1〜2年後はその問題が大きくクローズアップされてくるだろう。
A(江川氏):都市居住が進む一方で商店街が衰退するなど、街では様々なことが同時に起こっている。非常勤で教えている大学の卒業設計では、すたれつつある商店街を小学校にしようという提案が評価された。開発者に新しく整備させることだけを考えるのではなく、町中のストックを再利用するなど、総合的に考えていく必要があるだろう。
A(坂 氏):千種南から歩いて15分くらいのところにサッポロビール跡地があり、そこと連携できないかと考えている。千種駅から計画地を通り、サッポロビール跡地まで歩いて楽しめる歩行者ネットワークをつくりたい。名古屋市にも働きかけている。一体的・総合的なまちづくりを考えている。
○永柳 氏
今日はライフスタイルというテーマであったが、特に名古屋では、都心での生活を謳歌できているのか疑問。郊外と値段がかわらないから都心に住むということがあるのではないか。そうではなく、都心ならではの魅力的なライフスタイルを求めて都心に敢えて住むようになるまでには、まだ時間がかかるのかもしれない。